今回は2025.4.12~4.13に行われた千葉ジェッツ対サンロッカーズ渋谷との試合をスタッツなどのデータを中心に振り返ってみましょう。
戦前データ
両チームは今シーズン初顔合わせなので、各チームのデータを中心に今シーズンを振り返ってみましょう。
千葉ジェッツ

平均得点はリーグ5位の82.22得点と、リーグ有数のオフェンシブチームとなった千葉ジェッツ。相次ぐケガ人の発生で、CSまで完全体・千葉ジェッツはまたしてもお預け状態になっています。
特に痛手なのが、メインPGの富樫勇樹選手が足首のねん挫で今シーズンのレギュラーシーズンでの出場がほぼ不可能となったこと。ここで奮起が必要なのがリザーブPG陣ですが、Bリーグファンにとっては安直ですが、瀬川琉久選手が注目選手になります。
瀬川選手は現役高校生中に特別指定選手として千葉とプロ契約を結んだ18世代No.1PGとして知られています。富樫選手がケガで戦線離脱してからの2戦、スターターPGはベテラン・西村文男選手が務めていますが、メインローテーションを担っているのは明らかに瀬川選手です。
特に前節の仙台89ers戦では積極的な攻めでチームを引っ張り11得点・2REB・3AST。特筆すべきはFTでなんと9/10。+/-もチーム2番目の+17と貢献しました。
瀬川選手の凄いところは、チーム最年少ながらガンガンペイントアタックするところで、サンプル試合数が少ないながら、平均FTAは2.9本とリーグのPGとしては8位の成績。確率も80.0%と高水準なのも光ります。
ケガ人が多い千葉ですが、幸い、メインスコアラーとなるDJ・ホグ選手とクリストファー・スミス選手は健在。ただ、外国籍選手のローテーションの兼ね合いでジョン・ムーニー選手やマイケル・オウ選手ともタイムシェアしないといけないので、瀬川選手や金近廉選手のスコアリングが結構重要な試合になりそうです。
サンロッカーズ渋谷

千葉とは打って変わってディフェンシブチームの渋谷。そのチームを引っ張っているのがアンソニー・クレモンズ選手とジョシュ・ホーキンソン選手の2選手。他にもベンドラメ礼生選手や田中大貴選手もチームのDFには重要な選手ですが、やはりメインはこの2人でしょう。
この2選手がいるかいないかでチームのDefensive Ratingが大きく変わります(impactmetrics.jpより)。
基本、7人ローテーションで回すチームなので、サンプル数は少ないものの、クレモンズ選手とホーキンソン選手の2人のどちらかが欠けると、Defensive Ratingは約128~約146とかなり大きなマイナスになってしまっています。
加えて、両選手、チーム内での平均得点TOP2なので、オフェンスでも欠かせない存在です。それだけ強力な選手を抱えている渋谷ですが、中地区5位に甘んじているのは、この2人の役割が大きすぎるが故に、その負担も同時に重たくなっていることが要因の1つでしょう。
その証拠に、このチームでFG%が50%を越えているのはリード・トラビス選手のみ(52.3%)。次点でホーキンソン選手の48.9%、ケビン・ジョーンズ選手の46.9%と続きますが、4番目に高い確率でクレモンズ選手の41.2%です。ハイボリュームな選手がその確率で良いのか?という議論は出来そうですが…。
両者強力な2wayプレーヤー(攻守に優れたプレーヤー)デュオがPGとCでいる場合、どんな選手がいると渋谷というチームが強くなるか?と言うと、どんな選手を思い浮かべますか?
最早、答えは一択、3Pシューターです。渋谷には明確なピュアシューターがいないのが最大の弱点なのです。敢えてこのチームの3Pシューターは誰か?と見てみると、トロイ・マーフィーJr選手で3P%が39.1%と一見優秀ですが、FGAの内訳が2P:3Pが1.3:1.8と、2PFGもそこそこ打ってしまってるんですよね。
結果、単調な攻めで相手DFにアジャストされやすいので、いくら強力なディフェンスを敷けても、得点が獲れないのでトントンになってしまうのが、渋谷というチームの特徴でしょうか?
戦前比較まとめ
以上をまとめると、両チームの勝利のカギは以下の通り。
- 千葉ジェッツ
- 瀬川選手がPGとしてチームを引っ張れるか。
- 瀬川、金近両選手のスコアリング。
- サンロッカーズ渋谷
- クレモンズ、ホーキンソン両選手のスコアリング。
- それ以外の選手の3PAと3P%。
5on5のマッチアップの構図がどうなるのか分かりませんが、ポジション的には瀬川選手にはクレモンズ選手かベンドラメ選手がディフェンスすることになりそう。
渋谷から見た千葉はホグ選手やスミス選手のオフェンスも脅威なので、その2選手を守るためにクレモンズ選手が当たりそうですが、起点を潰す・勢いを殺すことを念頭に置いたら、クレモンズ選手が瀬川選手にディフェンスすることもあるかもしれません。
これまでの試合を振り返ると、瀬川選手は外国人PGとマッチアップしたことがないはずなので、そんな選手を相手にパフォーマンスが発揮できるか注目です。
4/12の試合データ
基本スタッツ | ||
千葉ジェッツ | サンロッカーズ渋谷 | |
68 | PT | 70 |
25/63 39.7% | FG | 26/58 44.8% |
11/27 40.7% | 3P | 8/18 44.4% |
7/10 70.0% | FT | 10/16 62.5% |
37 | REB | 34 |
7 | OREB | 5 |
30 | DREB | 29 |
15 | AST | 20 |
7 | TO | 4 |
1 | STL | 6 |
2 | BLK | 2 |
18 | F | 14 |
14 | 被F | 18 |
詳細スタッツ | ||
5 | ファストブレイクポイント | 2 |
28 | ペイントエリア内の得点 | 28 |
2 | PTs Off TO | 6 |
7 | 2nd Chance PTs | 3 |
アドバンスドスタッツ | ||
千葉ジェッツ | サンロッカーズ渋谷 | |
64.04 | ポゼッション数 | 67.40 |
試合のペース:65.72 | ||
100.89 | Offensive Rate | 109.31 |
109.31 | Defensive Rate | 100.89 |
50.4% | TS% | 53.8% |
48.4% | eFG% | 51.7% |
0.50 | POTE | 0.86 |
52.1% | REB% | 47.9% |
19.4% | OREB% | 14.3% |
85.7% | DREB% | 80.6% |
60.0% | AST% | 76.9% |
9.4% | TO% | 5.8% |
1.01 | PPP | 1.09 |
0.16 | FTR | 0.28 |
第1戦は渋谷が先勝。1ポゼッション差という結果の通り、負けた千葉もPPP1.01と、決して悪いバスケをしていたとも言えない試合でした。ただ、勝敗を分けたのは、ゲームメイクの部分でしょうか?
「ゲームメイクのブブ」というとややこしい話のように聞こえますが、まず単純に試合のペースが65.72と極端に遅かったこと。試合のペースとポゼッション数に関する戦前のデータを振り返りましょう。
- 試合のペース比較
- 千葉:73.19
- 渋谷:68.77
- ポゼッション数比較
- 千葉:自ポゼッション→74.31 被ポゼッション→73.90
- 渋谷:自ポゼッション→68.92 被ポゼッション→69.28
これらのデータから、以下のことが言えると思います。
千葉のバスケは、リーグ平均的なペースで、相手チームよりポゼッションを得るスタイル。
渋谷のバスケは、遅いペースで、相手チームより少ないポゼッションでプレーするスタイル。
これらを念頭に今試合のチームポゼッションを見ると、千葉が64.04、渋谷が67.40と、明らかに千葉の方がスタイルを崩したゲームメイクになってしまったことが、点差は僅差でも勝敗を分けた大きな要因の1つと言えるでしょう。
そういう意味では、渋谷の方が試合のペース関係なく、ポゼッション数を普段のチーム平均近辺にあることから、いつも通りのバスケを展開したという感じですね。
その「いつも通りのバスケ」に加えて3P%が44.4%と高確率だったのが良かったです。過去のデータを見ていると、3P%が高くても下位チームに負けていることもしばしばあるので何とも言えませんが、少なくとも、この試合を優位に進めることに関して言えば、貢献した要素と言えるでしょう。
千葉のゲームメイクが上手くいかなかった要因としては、FTの項目にあると個人的には考えています。
千葉は1試合当たりの平均FTAは20本弱獲得しているところ、今試合は僅か半分の10本。FTAが伸びなかったのも、保持したポゼッション数にムラが出てしまった要因なのは明らかでした。
その背景にはスコアラーのショットチャートの偏りもあるかもしれません。DJホグ選手のFG内訳が2PFGA:3PFGAは6:13。それぞれ確率も申し分なく、ゲームハイの24得点をたたき出しましたが、FTAは0本。良くも悪くもシューターとして振り切ってしまいました。
富樫選手はロスター外、渡邊雄太選手はベンチ入りしていたものの、試合には出ないことは確定していたはず。となると、ペイントアタックしていく選手は瀬川選手・ホグ選手・スミス選手以外計算が立つ選手があまりいないので、アグレッシブなプレーでホグ選手にはチームを引っ張っていってもらいたいです。
4/13の試合データ
基本スタッツ | ||
千葉ジェッツ | サンロッカーズ渋谷 | |
68 | PT | 55 |
24/64 37.5% | FG | 21/59 35.6% |
9/27 33.3% | 3P | 7/19 36.8% |
11/13 84.6% | FT | 6/8 75.0% |
42 | REB | 35 |
13 | OREB | 9 |
29 | DREB | 26 |
15 | AST | 15 |
7 | TO | 9 |
4 | STL | 2 |
5 | BLK | 3 |
15 | F | 20 |
20 | 被F | 15 |
詳細スタッツ | ||
7 | ファストブレイクポイント | 9 |
30 | ペイントエリア内の得点 | 20 |
13 | PTs Off TO | 11 |
10 | 2nd Chance PTs | 7 |
アドバンスドスタッツ | ||
千葉ジェッツ | サンロッカーズ渋谷 | |
63.72 | ポゼッション数 | 62.52 |
試合のペース:63.12 | ||
106.72 | Offensive Rate | 87.97 |
87.97 | Defensive Rate | 106.72 |
48.8% | TS% | 44.0% |
44.5% | eFG% | 41.5% |
1.44 | POTE | 1.57 |
54.5% | REB% | 45.5% |
33.3% | OREB% | 23.7% |
76.3% | DREB% | 66.7% |
62.5% | AST% | 71.4% |
9.1% | TO% | 12.6% |
1.07 | PPP | 0.88 |
0.20 | FTR | 0.14 |
第2戦は千葉がリベンジ。前の試合に敗因の一つとして挙げたFTAは10本→13本、FTRは0.16→0.20と大きく変わっていませんが、変わったのは内訳で、スコアリングハンドラーのホグ選手がしっかりとFTを獲得していました。
ただ、この試合、千葉にとってオフェンス以上に光ったのがディフェンスでしょう。5BLKで、スコアラーのホグ選手が2BLKとディフェンスでも貢献していたことも大きいですが、出足の第1Qの渋谷のFGを5/17に抑えていたのが、この試合の大勢を決めていたでしょう。
渋谷は第1Q残り1分8秒まで、FGを成功させていたのはなんとホーキンソン選手のみ。それまでスコアラーのクレモンズ選手はもちろん、第1戦でFG:5/6、3P:3/3で決めていた田中大貴も積極的にシュートを放ちましたが、いずれの選手もFG成功は0本でした。
また、この試合、点差を大きく放したのが第1Q(22-11)と第3Q(22-9)でしたが、いずれのQでもチームのDREBが10本。それぞれのQでのDREB%は第1Qが83.3%、第3Qが71.4%と高い水準を示しています。
渋谷はこの点差を付けられた2つのQでFGAを記録したのはスターターの5人のみ。Qごとのオンコートはスターター含めて8選手がオンコートだったことを考えると、この3選手にあたる選手たちのFGが奮ってこないと、中々流れを持ってくるのが難しいですね。W杯や五輪など世界大会での日本代表経験のある選手が複数いるチームと言えども、「層が薄い」という評価になってしまうかもしれません。
まとめ
今節、星を分け合った両チームですが、別の試合の結果により、明暗が分かれる結果に。千葉は群馬が2連敗したので、地区2位に浮上。逆に渋谷にとっては名古屋DDが2連勝したので、CSワイルドカード枠が3位→4位に後退しました。
千葉は次節宇都宮ですが、以後は北海道・茨城・秋田・仙台とお世辞にも強豪とは言えないチームとの対戦なので、CSワイルドカード枠に仮に落ちたとしても、勝率を維持できる可能性があります。
対する渋谷は、最近調子を上げだしている名古屋DD・川崎と続きます。中地区は既に三遠と、今節で決めたA東京がCSのストレートインが確定しているので、中地区チームのワイルドカード枠奪取のための争いが激化してきそうなので、厳しい戦いがまだまだ続きそうですね。
また、今節注目していた瀬川選手ですが、「期待以上の活躍」とは言えないかもしれませんが、いずれの試合も25分以上PGとしてコートで戦い、第1戦では11得点・1REB・3AST、第2戦では7得点・2REB・0ASTと、18歳という若さを考えれば、十分に頑張っていたと思います。
なんなら、この評価が「過大評価」と言えるくらいはもっと活躍を期待したい、「瀬川選手がもっとしっかりしていれば楽に勝てた」と言いたくなるような、そんな選手ですね。
コメント