遠いアメリカではNBAでもプレーオフがカンファレンスファイナルが5/21から始まり、いよいよシーズンの佳境に差し掛かってNBAクラスタの面々も落ち着いていられなくなってきていますが、日本のB1リーグでも今週末からFinalが開幕します。
これまでは試合が終わってからのレビューを中心にしてきましたが、今回は試合が始まる前のプレビューをしていってみたいと思います。
最後には、「どちらが勝つか?」という踏み込んだ予想までしていきたいと思います。
宇都宮ブレックス
まずはFinal進出の2チームの戦力分析から。レギュラーシーズンの傾向については、下記記事を振り返ってください。
CSでのスタッツデータ

宇都宮はQFでワイルドカード下位:シーホース三河(2勝0敗)と、SFで東地区2位:千葉ジェッツ(2勝1敗)と対戦しました。
三河とは下馬評通りの結果となりましたが、RS中は1勝3敗と相性が悪かった千葉との対戦ではRSのリベンジを果たす結果に。
特に千葉との第2戦では55-74と、リーグトップクラスのオフェンスを僅か55得点に抑えられ、第3戦で捲られるかとも思いましたが、千葉に24本ものTOを誘発し、Finalへの出場権を勝ち取りました。
RS中は、%FGA3Pがリーグで唯一50%を超えているチームでしたが、CSに入ってからは46.8%と約6%も低下。相手チームにとっても宇都宮の3Pを警戒されていたことでしょう。それでも確率自体は35.9%と素晴らしいの一言です。
注目選手
ここからは宇都宮の注目選手を見て行きましょう。
ギャビン・エドワーズ選手
個人的に宇都宮で最もインパクトがあった選手がこのギャビン・エドワーズ選手。その理由は分かりやすくスタッツに現れています。
PPG | FG | 2P | 3P | FT | EFF | |
RS | 8.2 | 2.8/6.0 47.6% | 1.9/3.3 56.8% | 1.0/2.6 36.0% | 1.6/2.3 68.0% | 10.0 |
CS | 15.2 | 5.4/9.6 56.3% | 3.6/5.8 62.1% | 1.8/3.8 47.4% | 2.6/4.2 61.9% | 17.0 |
ほとんどのスタッツでRSの倍近い結果を残しています。振り返ると、昨シーズンも似たような傾向を残しており、CSという大一番に強い選手であるという印象を植え付けています。
特筆すべきはやはり3P。RS中も36.0%とEPS:1.08と優秀な数字を残していましたが、CSでは確率を10%以上伸ばして、EPS:1.49と驚異的な水準。3PFGAのエリアとしてはトップやウイングが多いですが、どの3Pエリアも苦手にしていない、素晴らしいストレッチビッグぶりを発揮していますね。
尚、CSのPPG:15.2得点はチーム2位の成績で、エースのDJ・ニュービル選手の13.6得点よりも多いです。チーム1位はグラント・ジェレット選手ですが、PPG:15.4得点なので、ほぼ同じ成績です。
ギャビン選手がこれだけの活躍をしていることで、チームに及ぼす最も大きな影響は、3人の外国人選手をオンコート出来る時間帯が多いことです。ギャビン選手は帰化選手なので、【ニュービル・ギャビン・ジェレット】の強力なラインナップを敷くことが出来るためです。得点力の高いラインナップなので、ビッグマン・クインテットを誇る琉球であっても脅威なのは間違いありません。
DJ・ニュービル選手
宇都宮のエースであり、個人的には今シーズンのMVPを受賞すべきと思っているDJ・ニュービル選手。
前述のギャビン選手とは異なり、PPGはRS中よりも下がっています。
PPG | FG | 2P | 3P | FT | EFF | |
RS | 17.1 | 5.7/12.2 46.9% | 3.0/4.9 60.4% | 2.8/7.3 37.9% | 2.9/3.9 72.5% | 22.5 |
CS | 13.6 | 4.2/8.2 51.2% | 1.8/2.6 69.2% | 2.4/5.6 42.9% | 2.8/4.8 58.3% | 20.6 |
FT%こそ奮っていませんが、FG%においては、2P%・3P%とも併せて向上しています。試投数が減っているので、より効率的なプレーを選択している印象です。これは、昨シーズンのRSとCSの傾向とは異なっている状態です。
この変化の背景には、やはり前述したギャビン選手の活躍があってのことでしょう。得点力の高いラインナップが敷けることで、難易度の高いプレーを選択する必要が無くなったことが考えられます。CSの2PFG%:69.2%というバグかと思えるスタッツからも見て取れます(それでも、RSの2PFG%:60.4%はPGというポジションを考えると尋常じゃないですが・・・)。
また、FT%は低くなっているものの、FTAは3.9本→4.8本と約1本多く獲得しています。FGA1本あたりのFTA獲得の指標であるFTRはRS:0.32に対して、CS:0.59と、スモールサンプルながら大幅に上昇しています。
CSではより相手ディフェンスが激しくなる一方、それに引かずアタックしてFDを誘発したら、相手チームの戦力を削ぐことにも繋がります。事実、FD数はRS:4.7本→CS:6.0本と、概ねFTA増加分に近い差本になっています。
小川敦也選手
ジェレット選手・ギャビン選手・ニュービル選手・比江島慎選手とCSでのPPGが高い選手を順に並べてみましたが、その次に来る5番目の選手がこの小川敦也選手(PPG:6.2得点)です。
チームの主戦力にベテラン勢が多数を占める宇都宮というチームの中にいて、CSロスターの中では石川裕大選手の次に若い22歳の選手のスタッツを見てみましょう。
PPG | FG | 2P | 3P | FT | STG | |
RS | 3.9 | 1.5/3.4 45.7% | 1.2/2.4 50.4% | 0.4/1.0 34.6% | 0.4/0.6 71.0% | 0.6 |
CS | 6.2 | 2.4/6.2 38.7% | 2.0/4.4 45.5% | 0.4/1.8 22.2% | 1.0/2.8 35.7% | 1.4 |
シュートの確率こそRSからは落ち込んでいますが、それでもPPGが約1.6倍、FGAが約1.8倍、FTAに至っては約4.7倍も増やしており、プレーすることに確固たる自信を抱きながらプレーしているのが伝わってきます。
また、その自信はディフェンスでも分かりやすく、スモールサンプルながらSTGはRSの倍以上を記録しています。積極的にプレーするのを決めてコートに立っているのでしょう。若手ということもあり、その積極性はファンの心を鷲掴みにしているのも納得です(モテ男No.1らしい)。
アジア杯予選Window3のバイウィーク明けから徐々に安定したプレータイムを得るようになってきており、その辺からベテランが多いチームの中で6thマンとしての立場を勝ち取ってCSに至っている印象があります。
優勝することで生まれるストーリー・レガシー
宇都宮が優勝することで生まれるストーリー・レガシーとして、真っ先に思い浮かぶのが、故・ケビン・ブラスウェルHCへ捧げる優勝となるでしょう。同HCは2023年に宇都宮ブレックスのACとして移籍し、2024-25シーズンからHCの任に就いたばかりでした。
また、ニュービル選手が今シーズンMVPも同時に受賞した場合、現リーグ最強の選手の座を確実なものにすることでしょう。
他にも、ベテランチームともあり、コアメンバーのほとんどが5年以上ともにプレーしています。今シーズンも優勝することになれば、リーグ全体としては、まだまだ世代交代という概念は生まれなさそうです。
琉球ゴールデンキングス
レギュラーシーズンの傾向については、下記記事を振り返ってください。
CSでのスタッツデータ

琉球はQFで西地区2位:島根スサノオマジック(2勝0敗)と、SFで中地区1位:三遠ネオフェニックス(2勝1敗)と対戦しました。
QFの島根とは、RS中は1勝3敗と不利なマッチアップかと思いましたが、ディフェンスで優位に立って勝利。
SFの三遠とは、第1戦を落としたものの、第2戦でダブルOTにもつれ込む大激戦を制しました。2点ビハインドで迎えたクラッチタイムで、ヴィック・ロー選手が逆転を狙ったディープ3Pが外れた後、松脇選手が起死回生のミッドレンジティップが決まったシーンは皆さんも記憶に新しいと思います。
第3戦は三遠・佐々木隆成選手が試合開始早々にアキレス腱断裂というアクシデントがあったものの、リーグNo.1オフェンスを誇る三遠の得点を69得点に抑えてSFを突破。抽象的ですが、「勢い」という点では宇都宮よりも強いかもしれません。
注目選手
琉球でも注目選手を見て行きましょう。
脇真大選手
シーズン終了間際にチームの司令塔である岸本隆一選手が左足の骨折および手術施行のためにCSを待たずにシーズンアウト。その代役としての役割を与えられました。
その期待の高さから、ドキュメンタリーなどで佐々ACから叱責をされている印象が個人的には強いですが、ここにきて少し一皮剥けそうな予感を感じます。
PPG | FG | 2P | FT | APG | TO | |
RS | 7.3 | 2.8/6.2 45.4% | 2.4/4.8 49.8% | 1.3/2.1 61.9% | 2.0 | 1.2 |
CS | 11.6 | 4.6/10.0 46.0% | 4.6/9.4 48.9% | 2.4/4.6 52.2% | 3.2 | 1.4 |
PPGは4点以上伸ばしており、3Pの成功は無いものの、FGは積極的に狙っていっている様子が分かります。FTAも倍以上増やしており、FTRは0.34→0.46とこちらも大きく伸ばしています。
また、求められるゲームメイク能力も、TO数がRSとほとんど変わらないにも関わらず、ASTは1.2本伸ばしています。チームのAPGやAST%的には、RSよりもアイソレーションバスケに寄っているので、多少強引なプレーは増えている印象なので、脇選手にはゲームのコントロールも頑張ってもらいたい所です。
ヴィック・ロー選手
チームキャプテンでエースのヴィック・ロー選手。まずはスタッツを見て行きましょう。
MIN | PPG | FG | 2P | 3P | FT | |
RS | 27:10 | 16.0 | 5.8/12.1 47.8% | 4.4/8.5 51.9% | 1.4/3.6 38.2% | 3.1/3.7 82.6% |
CS | 34:05 | 22.2 | 7.0/18.8 37.2% | 4.0/11.2 35.7% | 3.0/7.6 39.5% | 5.2/6.0 86.7% |
RPG | APG | SPG | F | FD | ETF | |
RS | 8.3 1.5/6.8 | 3.6 | 0.9 | 1.6 | 3.8 | 22.4 |
CS | 9.6 3.4/6.2 | 4.0 | 1.4 | 3.0 | 6.8 | 24.6 |
オフェンス・ディフェンスともに、正に「獅子奮迅」という言葉以外に見つかりませんでした。特に3PFGにおいては、成功数・試投数ともにRSよりも倍以上の数字を残しています。
REB面においても、元々8.3本と多い数字でしたが、CSになって9.6本と一段と積極的に絡むようになりました。それが顕著なのがOREBの1.5本→3.4本という部分。2nd Chance PTsもCSでは平均4.2得点挙げており、OREB:1本あたりでは1.23得点挙げています。
また、先に挙げた松脇選手のブザービーターの前のプレーではバスケIQの高さも見え隠れします。時間的にもっと奥まで入り込んでからシュートを放っても良かったですが、チームの強みであるOREBからの2nd Chanceの可能性も恐らく念頭に入れたショットセレクションだったと推察します。
優勝することで生まれるストーリー・レガシー
琉球は昨年のCSで広島ドラゴンフライズに先勝しながら、逆転負けしてしまったとても苦い経験をしてきたチーム。そのリベンジを果たしたいところ。
また、CSというレギュレーションが出来てから、実は毎年Finalまで到達している唯一のチーム。元々高い沖縄のバスケ熱が更に強くなりそうです。
勝敗予想
さて、両チームを簡単に分析してみましたが、勝敗予想に踏み込んでいくと…
筆者としては【2勝0敗】もしくは【2勝1敗】で宇都宮ブレックスが勝利すると思います。
第2戦はもしかしたら琉球にとられてしまうかもしれませんが、ベテランチームらしく、1戦1戦全開で戦いはするものの、シリーズ全体を俯瞰して戦う能力は、どうしても宇都宮の方が上手いと思ってしまいます。
確かに、琉球の方がREB面を始めとしたディフェンス力は強いと思いますが、オフェンスの手札が宇都宮は多いので、単純に火力負けしてしまう印象があります。エースの爆発力は琉球のヴィック選手が筆頭で優勢ですが、総合的な火力としては、宇都宮より上を行っている印象はありません。
仮に琉球が優勝する場合は、勢い任せで先勝して、2勝0敗のパターンとなると思っていますが、逆に2勝1敗での優勝の可能性は低いと思っています。それだけ宇都宮の俯瞰力は強いのではないでしょうか?
ティップオフは本日の14:30~。筆者は先日第二子が産まれたばかりなので、試合など絶対に観れませんが、結果だけは常に追っていこうと思います。
皆さんの予想はどうでしょうか?
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