第23節|群馬クレインサンダーズ✕長崎ヴェルカの試合レビュー

試合レビュー

2026/2/14~2/15で開催された、群馬クレインサンダーズ@長崎ヴェルカの試合をレビューしていきましょう。

FIBAW杯2027アジア1次予選Window2を今月末に控え、今節終了後からまたバイウィークに突入するB1リーグ。いよいよチャンピオンシップ(以下、CS)出場に向けて振るいに掛けられる段階に入ってきました。

現在、ワイルドカード圏内ギリギリの群馬、目下リーグトップに君臨する長崎に対してどのような試合を展開したのか、振り返ってみようと思います。

戦前データ

群馬クレインサンダーズ

戦前東地区5位・ワイルドカード4位に位置する群馬。前節、大阪に2連勝したとは言え、地区のトップ層からはやや水を開けられた感があります。

CS出場権獲得のために重要となってきた中盤戦において、チームはロスターの入れ替わりが激しく、戦術のコアを試合ごとに調整しなくてはならない厳しい台所事情に陥りました。

第19節の滋賀戦でトレイ・ジョーンズ選手が復帰したと思ったら、再びの故障で第21節の宇都宮戦から戦線離脱。
その宇都宮戦からヨハネス・ティーマン選手(以下、JT)が復帰して、チーム内のパワーバランスを再構築しないといけない状況にあります。そんな中、宇都宮との2連戦で1勝1敗だったのは良しとするべきかどうか。試合内容的には2連勝してもおかしくなかったため、「及第点」とするのは甘い気もします。

この難しい状況の中、苦しんでいるのは同じ外国籍選手であるテレンス・ウッドベリー選手。滋賀戦以前まではPPG:13.5得点、FG%:54.4%だったのが、滋賀戦以降の7試合でPPG:11.3得点とまずまずなものの、FG%:43.7%まで落ち込んでいます。
ウッドベリー選手の強みと言えば、自身でクリエイトするMid-Jumperですが、シュートレンジの広くないJTとの組み合わせはスペースが作り出せず、シュートのタッチも悪くなる傾向にあります。

トレイ選手やJTがIL入りした時に、その穴を埋めるべく契約を結んだ選手という背景もあり、「そろそろ契約解除となるか」となったところに想定よりも延期となっているため、メンタルの保ち方が難しそうですね。

そんなチームを今引っ張っているのは、中村拓人選手とケリー・ブラックシアーJr選手(以下、KBJ)の元広島デュオ。両選手の直近7試合のスタッツを見てみましょう。

両選手とも、チームとしての役割の強度を保ちつつ、得点面によりアグレッシブに望んでいます。ミリングHCの広島優勝時代のコアだったデュオなので、HCとしても頼りになる存在だと思います。この2選手の活躍は長崎戦勝利には不可欠です。

長崎ヴェルカ

冒頭にも述べたように、西地区1位、B1リーグ全体で唯一30勝を超えている(31勝6敗)チームです。主要スタッツでも、PPG・3P%・AST・STLの4項目でリーグトップ、FG%もリーグ2位と、リーグのトップチームに恥じない成績を残しています。

当サイトのレビューでは過去に2試合分レビューしてきましたが、この2試合観ただけでも、「今シーズン観てて最も楽しいチーム」と言えるチーム。既にシーズンの半分が終了していますが、バイウィーク明けから初めてBリーグの試合を観る人には、間違いなく長崎を推します。

元NBA選手のスタンリー・ジョンソン選手(以下、SJ)のハイパフォーマンスももちろんですが、SJのいない時間帯の見どころも多いです。

OFではボールも人も良く動いて、それでいて、ミスっぽいミスが数字ほど多く感じられません。TOV数はリーグ12番目に多いのが意外です。
また、観ていても停滞している感がほとんど感じられません。大体のチームは相手DFに攻め手を防がれた時に、立て直しに一度OFが止まることが多いですが、長崎はそのギャップが極めて少なく、チームOFと個人の打開がシームレスに行われています。

DF面でも、馬場雄大選手・SJ・山口颯斗選手といった対人DF能力が世界レベルに高い選手が揃っているのも、名古屋DDに次ぐリーグ2位のDF Rateを誇ります。

が、ASブレイク明けからは4勝3敗とややブレーキがかかっています。その要因を考えていこうと思います。

チームとしてまず明確なのはREBの部分。勝利している試合はREB:38.6本ですが、敗北している試合では34.0本にまで落ち込みます。
ASブレイク明け7試合のみを抽出しても、36.3本と少なく、REB意識の低さが勝率の停滞を招いている要因と言えます。シーズン全体でもリーグ11位と、他のスタッツに比べると平凡な成績なので、数少ない長崎の弱点と言えるかもしれません。

個人のパフォーマンスの中で低調の要因を考えるならば、馬場選手のパフォーマンスの波。チームの勝敗ごとに馬場選手のスタッツを見てみましょう。

目立つのは分かりやすくシュート効率。以前までは、良い時はMVP級のパフォーマンスを見せ、悪い時は大チョンボをかますことが多かったですが、AST・TOVを見ていると、必ずしもそうではないことが伺えます。OFの起点・打開を試みると、チームとしても停滞を招くのかもしれません。

2/14の試合データ

各チームを振り返ったところで、それでは今節の試合のデータを振り返っていきましょう。

基本スタッツ

群馬クレインサンダーズ長崎ヴェルカ
80PT97
28/61
45.9%
FG33/68
54.4%
20/35
57.1%
2P23/35
65.7%
8/26
30.8%
3P14/33
42.4%
16/16
100.0%
FT9/14
64.3%
38REB26
11OREB5
27DREB21
20AST25
20TOV10
2STL9
0BLK0
21F19
基本スタッツの略語について

詳細スタッツ

群馬クレインサンダーズ長崎ヴェルカ
71.4%%FGM2P62.2%
28.6%%FGM3P37.8%
57.4%%FGA2P51.5%
42.6%%FGA3P48.5%
50.0%%PT2P47.4%
30.0%%PT3P43.3%
20.0%%PTFT9.3%
10Points Off TOV24
12Fast Break Points18
112nd Chance Points10
32Points In the Paint44
26Bench Points16

()
After TO Results
(Points)

()
After TO +/-
詳細スタッツの略語について

アドバンスドスタッツ

群馬クレインサンダーズ長崎ヴェルカ
77.04ポゼッション数79.16
試合のペース:78.10
103.84Offensive Rate122.54
122.54Defensive Rate103.84
58.8%TS%65.4%
52.5%eFG%64.7%
1.00POT Efficasy1.20
1.002nd Chance Efficasy2.00
59.4%REB%40.6%
34.4%OREB%15.6%
84.4%DREB%65.6%
71.4%AST%67.6%
22.7%TOV%11.9%
1.04PPP1.23
After TO PPP
0.26FTR0.21
アドバンスドスタッツの略語について

Shoot Summary

群馬クレインサンダーズ長崎ヴェルカ
7/15
46.7%
Self-Shootmake6/15
40.0%
5/12
41.7%
MID-Jumper1/5
20.0%
7/7
100.0%
Short-Jumper4/5
80.0%
0/3
0.0%
Push0/4
0.0%
1/3
33.3%
Floater1/2
50.0%
6/9
66.7%
Lay-Up13/15
86.7%
1Dunk2
0Tip-In2
4/11
36.4%
Catch&Shoot10/22
45.5%
2/5
40.0%
Moving3/7
42.9%
2/11
18.2%
Pull-Up1/4
25.0%
3/8
37.5%
Wide-Open2/5
40.0%
Shoot Summaryについて

戦評

最後は長崎の地力に力負けした群馬

立ち上がり7-0のスコアリングランをかましてリードし、その後も10点差以上つけられないように長崎に追いすがった群馬ですが、第4Q中盤以降に突き放されました。

数字上のペースは見たまんまの長崎ペースで試合ペース:78.10。群馬が長崎に与えた79.16POSSは延長戦を含めなければこのシーズン最多のPOSS数です。

試合のペースが速い中、群馬は%FGA3Pがシーズン平均:47.0%のところ、この試合は42.6%。最終的な確率が30.8%だった結果論からすると、確率の悪いシュートよりも確率の良い2Pを選択すること自体は悪くないですが、3P:14/33(42.4%)、%FGA3P:48.5%の長崎とは攻撃力の差がそのままスコアに出た試合となりました。

突き放された第4Qだけで3P:5/9(55.6%)を記録、eFG%はQ毎に55.3%→59.4%→73.1%→72.5%と尻上がりにシューティングを向上させられたのも痛かったですね。

群馬はクリエイター不足が影響

この試合、群馬は中村選手がコンディション不良により欠場。映像には映っていたので、インフルエンザなどの感染症ではないことは分かるので安心しました。が、プレー面においては影響がかなり大きかったです。

中村選手の良さと言うと、ボール保持の安定感と、行ける時はしっかりペイントフィニッシュまで行けるところですが、この試合、ゲームコントローラーとなった藤井祐眞選手とコー・フリッピン選手は、タイプ的にそうならないんですよね。

この2選手のプレースタイルは個人的にはこんな感じ。

  • 藤井選手:%FGは2P<3P。Floater+Lay-UpのAttemptが7本に対して、Pull-Upが80本。ショットメイクも出来るが、基本は3Pがメイン。
  • コー選手:%FGは2P>3P。3Pはノンシューターもノンシューターで今シーズン3P成功なし。他の選手ならCatch&Shootの場面でも、ドリブルをついてPull-UpのMid-Jumperを選択。

データ上、藤井選手はペイントアタック→フィニッシュまで完結することが苦手だし、コー選手はノンシューター過ぎてスペースが生まれず、フィニッシュの判断力に重要度が偏りがちです。

中村選手自身もノンシューターではありますが、選択肢が発生しないほど極端ではないですし、Pick&RollからDFを背中に背負ってクリエイトする能力も高い選手。後述する長崎の攻撃的なDFにも慌てずに対処できたであろう選手なだけに、ハンドラーの力量不足を痛感させられた試合でした。

リーグトップレベルのDFが発揮された長崎

リーグトップのOF力を誇る長崎ですが、DFも同様にリーグトップレベル。試合終了後の馬場選手からのコメントでもありました。

この試合、群馬相手に誘発したTOVは実に20本。群馬にとって今シーズンワーストのTOV数で、POSSあたりのTOVの割合であるTOV%も22.7%と同様にワーストに陥れました。

特徴として、Pick&Rollの時にハンドラーへハードショウDFを仕掛けて圧力を与え、ハンドラーではない選手に早々とボールを持たせるDFを敷きました。

その結果、ハンドラーではないAJ・エドゥ選手、ウッドベリー選手のTOVを誘発(それぞれ、4本と6本)し、ハンドラーである藤井選手とコー選手もそれぞれ3本ずつのTOVを誘発させました。語弊を恐れずに言えば、そういうシチュエーションに落とし込まれた時点で、総じてハンドラー陣のTOVとも言えます。

特に突き放しにかかった後半だけで14本のTOVを誘発したことが、長崎のDFの圧力が凄まじく、ハードワークの強さと、それを続ける体力を示した一戦だったのではないでしょうか?

2/15の試合データ

基本スタッツ

群馬クレインサンダーズ長崎ヴェルカ
72PT77
23/62
37.1%
FG23/60
38.3%
18/32
56.3%
2P16/36
44.4%
5/30
16.7%
3P7/24
29.2%
21/26
80.8%
FT24/32
75.0%
46REB36
14OREB7
32DREB29
23AST17
17TOV9
6STL9
2BLK3
25F20
基本スタッツの略語について

詳細スタッツ

群馬クレインサンダーズ長崎ヴェルカ
78.3%%FGM2P69.6%
21.7%%FGM3P30.4%
51.6%%FGA2P60.0%
48.4%%FGA3P40.0%
50.0%%PT2P41.6%
20.8%%PT3P27.3%
29.2%%PTFT31.2%
9Points Off TOV15
10Fast Break Points14
102nd Chance Points5
32Points In the Paint32
32Bench Points6

()
After TO Results
(Points)

()
After TO +/-
詳細スタッツの略語について

アドバンスドスタッツ

群馬クレインサンダーズ長崎ヴェルカ
76.44ポゼッション数76.08
試合のペース:76.26
94.19Offensive Rate101.21
101.21Defensive Rate94.19
49.0%TS%52.0%
41.1%eFG%44.2%
1.00POT Efficasy0.88
0.712nd Chance Efficasy0.71
56.1%REB%43.9%
32.6%OREB%17.9%
82.1%DREB%67.4%
100.0%AST%73.9%
18.8%TOV%10.8%
0.94PPP1.01
After TO PPP
0.42FTR0.53
アドバンスドスタッツの略語について

Shoot Summary

群馬クレインサンダーズ長崎ヴェルカ
2/7
28.6%
Self-Shootmake6/23
26.1%
2/6
33.3%
MID-Jumper1/4
25.0%
3/4
75.0%
Short-Jumper3/3
100.0%
3/5
60.0%
Push2/5
40.0%
1/2
50.0%
Floater0/3
0.0%
9/15
60.0%
Lay-Up9/18
50.0%
0Dunk0
0Tip-In1
2/13
15.4%
Catch&Shoot7/17
41.2%
1/9
11.1%
Moving0/2
0.0%
2/8
25.0%
Pull-Up0/5
0.0%
2/6
33.3%
Wide-Open1/3
33.3%
Shoot Summaryについて

戦評

1戦目の反省を活かした群馬のOF、だったが…

2戦目も1戦目同様に中村選手は欠場。というわけで、この試合もメインハンドラーは藤井選手とコー選手の2選手が務めることに。

1戦目はハンドラーが高い位置でハードショウDFやPoA-DFに掴まって、ビッグマンが高い位置でボールを保持→TOVを犯すという悪い流れになってしまいましたが、この試合は序盤から落ち着いて対処していました。

1戦目はDFの圧力に負けてドリブルを止めてしまったことが響きましたが、この試合は前半から安易に止めずにボールコントロールし、ペイントエリアの深いところにフィニッシャーがカッティングして、リム周りでフィニッシュ。
最終的なデータではLay-Up:9/15(60.0%)でしたが、前半はほとんど失敗がありませんでした。フィニッシュに苦労していた長崎とは対照的に、フィニッシュの段階までいけば、割と簡単なシチュエーションにまで持って行けてたので、クラッチタイムを除けば、1戦目からのアジャストが上手く行っていたと言えるでしょう。

が、最後の最後で揺り戻しが来たというか、第4Q残り1:33、長崎:馬場選手がFTを1本外して69-68となった、次の群馬のポゼッション。かなり重要なポゼッションでしたが、ハンドラーのコー選手がウイングの高い位置でボールを止めてしまいました。
その後、JTが助けに来てボールを受け取りましたが、SJにスティール。その直後の長崎のPOSSで、馬場選手のカッティングにヘルプが間に合わず、逆転を許す…。コー選手の悪いところが全て現れた場面でした。

とにかくミスマッチを突いてきた長崎

群馬にDFをアジャストされて、1戦目の優位性が若干薄れた長崎。OF面で顕著だったのは、とにかくサイズのミスマッチをついてくる場面が多かったです。今シーズン、B1リーグ1on1トッププレイヤーと言っても過言ではないSJにおいても、群馬のスモールウィングである辻直人選手や細川一輝選手とのマッチアップを選択していたほどです。

そのミスマッチで群馬のファウルを量産。25本のその全てがミスマッチから発生したものではないですが、対面が不利になった群馬はマッチアップの選手がファウルで止めるか、ヘルプの選手がファウルに誘い込まれる場面が多かったです。

幸い、長崎のFT%が必ずしも高くは無かったですが、被FTA:32本はそれまでぶっちぎりだった12/7@富山戦の31本を超えるシーズンワーストの記録となってしまいました。

「流石、元NBA選手のスタンリー・ジョンソン」という残り30秒

SJのインバウンズから始まった試合最終盤の長崎のATO-OF。右45°のウイング高い位置でパスを受け取ったSJは、3Pライン付近で待ち構えていた細川選手をあざ笑うかのようにDeep 3Pを放ち、それを沈めました。

NBAの3PラインはBリーグでも採用しているFIBAルールよりも遠く設定されているのは周知の事実だと思いますが、恐らくNBAラインからも遠い位置でしょう。
それまで、3P:2/9(22.2%)でしたし、今シーズンのデータ上も当該のエリアは21/65(32.3%)と決して期待値の高くないショットセレクションでした。突破力の高さからペイントアタック(あわよくば&1)を狙われるリスクを考えると、細川選手のDFを批判することは出来ません。結果的にゲームウィナーとなったシュートを、ここぞという場面で決め切ったSJに賞賛を送るべきでしょう。

そして、個人的に「流石!」と思ったのは次の群馬のPOSSでした。
群馬のインバウンズで開始した、こちらもATO-OF。ボールを持ったコー選手がペイントにアタックしてきますが、ヘルプサイドで待ち構えていたのはSJ。この場面、「2PならOK」という冷静さが働き、コー選手に対してヘルプに行かない選択肢を取りました。

その一瞬のDF選択が、コー選手のキックアウトを遅らせ、馬場選手のクラッチBLKに繋がりました。やや玄人チックな見方ですが、SJが最後の30秒に長崎に勝利をもたらしました。

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