今回は2025.3.22~23に行われた宇都宮ブレックス対三遠ネオフェニックスとの試合をスタッツなどのデータを中心に振り返ってみましょう。
お互い所属地区を他の追随を許さず、ブッチ切りで首位を走っているチーム同士の衝突。CSでもあたる可能性が十分に高い両チームの試合はどうなったのでしょうか?
戦前データ
今シーズン初顔合わせとなったので、それぞれのチームの特性を中心に、今シーズンこれまでを振り返ってみましょう。
宇都宮ブレックス


第24節の試合レビュー記事でも触れましたが、宇都宮はFGの内訳が2P<3Pとなっている珍しいチームです。それでいてFG%が47%超もある、非常に高効率なチームとして認識しています。
そんなチームを引っ張っているのは、エースのDJ・ニュービル選手。Bリーグには珍しい外国籍選手のPGですが、この選手から展開されるオフェンスがまぁ強力も強力です。
ニュービル選手のFGAは半分弱がペイントエリアでのシュートであり、その確率も驚異の60.9%。その高いドライブ能力を活かして、3Pエリアで待機する比江島慎選手・遠藤祐亮選手・高島紳司選手といったシューター陣へのキックアウト→オープン3Pを演出していることが伺えます。
更にインサイドプレーヤーではアイザック・フォトゥ選手やギャビン・エドワーズ選手といった、アリウープダンクを狙える選手もいるため、相手ディフェンスとしては、ニュービル選手の手札が多過ぎて抑えきれないことが、現在の宇都宮の順位を物語っているでしょう。PPP:1.18の高効率チームにふさわしい布陣と言えます。
また、ディフェンスにおいてもニュービル選手の貢献度は高く、PG(正確にはSGもこなすためコンボガード)の選手としてはREB数がリーグTOPの成績(237本)。2位(アンソニー・クレモンズ選手(渋谷):202本)以下に30本以上も差をつけています。
チームとしてもDefensive Rateが102.02とかなり低いので、地区首位チームらしく、攻守ともに隙の無いチームです。
そんなスキなし・宇都宮の弱点を敢えて見出すなら、それは2nd Chance時のディフェンスの弱さ。
「弱さ」と言っても、明確な弱点ではないですが、被OREBに対する被2nd Chance PTsは0.95失点。期待値は1.00を下回っているので、決して悪い数字ではありませんが、今回対戦する三遠はガツガツ攻めてくるタイプのチームなので、分が悪くなる可能性も十分あります。
三遠ネオフェニックス


中地区首位、また、Bリーグ全体でも勝率1位で驚異の9割越えを誇る三遠ネオフェニックス。このチームの特徴と言えば、もはや説明不要レベルの高いオフェンス力ですね。
- 平均得点:リーグ1位
- 平均FG%:リーグ1位
- 平均3P%:リーグ1位
- 平均アシスト数:リーグ1位
- Offensive Rate:リーグ1位
こんな感じでオフェンスに関わるデータのほとんど、と言うか全てリーグ1位の成績です。
三遠はとにかくタレントが豊富で選手層がかなり厚いですよね。エースのヤンテ・メイテン選手を筆頭に、2023年W杯・2024年パリ五輪の代表にもなった吉井裕鷹選手の他、佐々木隆成選手・大浦颯太選手・津屋一球選手も日本代表候補、デイヴィッド・ヌワバ選手は元NBA選手(Houston Rocketsなどで6シーズンプレー)と、そうそうたるメンツ。
加えて、(最近は大人しくなってしまいましたが)若手で3枚目のPGながら、存在感を表すことが出来る湧川颯斗選手も個人的に注目する選手の1人です。
宇都宮の項でも触れましたが、とにかく「ガンガン行こうぜ!」的なチームで、FTR:0.32の高水準。FTAが30本を超えることもしばしばあり、前節の@川崎戦(110-98で勝利)では、なんとFTA:44本を記録。誘発したファウルも33本と、正に「ファウルでないと止められないチーム」と言えるでしょう。
ただ、FTAやFTRが最大の強みと言える一方、明確な弱点なのがFT%。チームFTの多くをメイテン選手(FTA:6.5本)やヌワバ選手(同:6.0本)が獲得するのですが、いずれの選手も確率が低いのが難点。ヌワバ選手は69.7%で「それでも、まぁ…」という感じなのですが、メイテン選手は55.3%。獲得したFTの半分近くを失敗している計算です。この辺が明確な弱点のない宇都宮との決定的な違いですね。
それでも、その弱点を補って余りある要素が多いのもまた事実。宇都宮の弱点として挙げた2nd Chace PTsですが、三遠は期待に漏れず16.27とリーグ2位。その2nd Chanceの起点となるOREB%も37.8%と驚異的な水準なので、かなりの強みを持っています。
戦前比較まとめ
以上をまとめると、各チーム、勝敗を握るのは以下の要素。
- 宇都宮ブレックス
- 3Pシューターの精度。
- DJ・ニュービル選手のゲームメイク。
- 三遠ネオフェニックス
- FTの精度。
- OREBや2nd Chance PTsで優位に立ちたい。
この辺を念頭に置いて、試合を振り返ってみましょう。
3/22の試合データ
基本スタッツ | ||
宇都宮ブレックス | 三遠ネオフェニックス | |
88 | PT | 86 |
33/75 44.0% | FG | 30/70 42.9% |
9/30 30.0% | 3P | 10/30 33.3% |
13/20 65.0% | FT | 16/31 51.6% |
44 | REB | 44 |
15 | OREB | 15 |
29 | DREB | 29 |
21 | AST | 17 |
9 | TO | 7 |
3 | STL | 6 |
3 | BLK | 6 |
28 | F | 25 |
22 | 被F | 28 |
詳細スタッツ | ||
10 | ファストブレイクポイント | 11 |
42 | ペイントエリア内の得点 | 36 |
9 | PTs Off TO | 10 |
14 | 2nd Chance PTs | 21 |
アドバンスドスタッツ | ||
宇都宮ブレックス | 三遠ネオフェニックス | |
77.80 | ポゼッション数 | 75.64 |
試合のペース:76.72 | ||
113.11 | Offensive Rate | 113.70 |
113.70 | Defensive Rate | 113.11 |
52.5% | TS% | 51.4% |
50.0% | eFG% | 50.0% |
1.29 | POTE | 1.11 |
50.0% | REB% | 50.0% |
34.1% | OREB% | 34.1% |
65.9% | DREB% | 65.9% |
63.6% | AST% | 56.7% |
9.7% | TO% | 7.7% |
1.13 | PPP | 1.14 |
0.27 | FTR | 0.44 |
1ポゼッション差で決着という、イチバスケファンとしての戦前の期待通り、正にがっぷり四つの試合となりました。
その証拠?と言うべきか、勝利した宇都宮の方がNet Rating(=Offensive Rate-Defensive Rate)が-0.59という珍しい形に。基本的には勝利したチームの方がプラスになるものなのですが、両チーム効率が良く、かつ接戦になると今回のような結果が算出されることがあるようです。
そんなレーティングの状況で、REB%もお互い50.0%、OREB・DREBの数値も全く同じ。多少違いは出たものの、FG%もほとんど変わらず。TOもお互い1ケタ本数と、かなり締まった試合になりました。
で、この試合の命運を分けたのは、ほぼ間違いなく「FTの精度」でしょう。
戦前、宇都宮のカギは「3Pシューターの精度」と書きました。高島選手が3/7(42.9%)と気を吐きましたが、その他のシューター陣がパッとせず、ゲームハイの25得点を挙げたニュービル選手も3Pに限っては3/10(30.0%)と、精度に欠けていました。この辺の3Pシューターに対する三遠のアプローチは成功したと見て良いでしょう。
ですが、それを帳消しにするほどのFT%の低さ。相変わらず、FTAは多く獲得していますが、16/31(51.6%)と、半分近くFTを失敗することになりました。その他の分野では負けず劣らず、なんなら戦前に挙げていた2nd Chance PTsは21-14と大きく優位に立っていましたからね。三遠としてはかなり悔やまれる試合結果になりました。
3/23の試合データ
基本スタッツ | ||
宇都宮ブレックス | 三遠ネオフェニックス | |
89 | PT | 105 |
30/70 42.9% | FG | 38/66 57.6% |
14/38 36.8% | 3P | 10/21 47.6% |
15/23 65.2% | FT | 19/25 76.0% |
37 | REB | 35 |
14 | OREB | 8 |
23 | DREB | 27 |
23 | AST | 24 |
11 | TO | 9 |
8 | STL | 5 |
0 | BLK | 0 |
25 | F | 21 |
21 | 被F | 25 |
詳細スタッツ | ||
11 | ファストブレイクポイント | 13 |
32 | ペイントエリア内の得点 | 52 |
9 | PTs Off TO | 20 |
16 | 2nd Chance PTs | 14 |
アドバンスドスタッツ | ||
宇都宮ブレックス | 三遠ネオフェニックス | |
77.12 | ポゼッション数 | 78.00 |
試合のペース:77.56 | ||
115.40 | Offensive Rate | 134.62 |
134.62 | Defensive Rate | 115.40 |
55.5% | TS% | 68.2% |
52.9% | eFG% | 65.2% |
1.00 | POTE | 1.82 |
51.4% | REB% | 48.6% |
34.1% | OREB% | 25.8% |
74.2% | DREB% | 65.9% |
76.7% | AST% | 63.2% |
12.1% | TO% | 10.5% |
1.15 | PPP | 1.35 |
0.33 | FTR | 0.38 |
前戦と異なり、2戦目は三遠が勝利。それも100点ゲームで、印象としては「完勝」という感じです。
と言うのも、OREBに大きく差を付けられた以外はほとんどの分野で宇都宮と互角もしくは上回っているからです。
FG%・3P%も1試合の記録としては驚異的な数値ですが、やはり、FT%が改善されると全然違いますね。尤も、1戦目と同じ確率だった場合でもおよそ95点以上は獲れていたので、計算上は勝利という結果に変動はないですが、アウェーの試合でFT失敗によって点差が広がらなければ、ホームアドバンテージの差で何が起きるか分かりませんから。
また、三遠の100点ゲームという結果から、課題であるFTを含め、強力なオフェンス面に目が行きがちですが、スタッツを眺めると、ディフェンスの面がこの試合輝いたことが分かっています。その理由はこれらのデータ。
- 宇都宮のSTL:8本に対して、三遠のTO:9本。
- 三遠のTO:9本に対して、宇都宮のファストブレイクポイント:11得点。
- 三遠のTO:9本に対して、宇都宮のPOT:9得点。
- 宇都宮のOREB:14本に対して、宇都宮の2nd Chance PTs:16得点。
まず、TO絡みの内容についてですが、三遠のTOの9割は宇都宮のSTLによって生み出されたものです。一般的にSTLによるTOはファストブレイクに繋がりやすいのは、少しでもバスケをやったことがある人なら分かると思います。
ファストブレイクポイントはディフェンスが整わない中でオフェンスが展開される所謂【トランジションオフェンス】の内の1つであり、バスケットボールという競技において、最も得点効率が良い得点パターンとして考えられています。
宇都宮のSTLシチュエーションの全てがファストブレイクシチュエーションに繋がっているわけではないと思いますが、それでも、被STL:8本に対して、被ファストブレイクポイントが11得点に抑えられているのは、それだけ三遠側のトランジションディフェンスが機能していたと推測するには十分な根拠だと思います。被POTも9得点に抑えられていますしね。
次に2nd Chance PTsの面でも宇都宮のOREB1本あたり、1.14得点しか許していない計算です。
こちらもスタッツ上は推測の域を出ませんが、OREBからの2nd Chance PTシチュエーションでは、ゴール下シュートやアウトサイドにパスして3Pシュートの2つが主に考えられます。いずれのパターンにも三遠側が上手く対応していたことが伺えます。
まとめ
星を分け合うことになった今節の事実上の頂上決戦。2試合を通して思ったことは、やはり、どちらのチームが明確に上だということが言えないほど実力は伯仲しているということでした。
宇都宮は明確な弱点がないものの、やはり3Pシュートの精度がオフェンスのカギを握りますし、それでも、36.8%と確率を残せた2戦目は三遠に押し負けてしまいました。逆に三遠にはFT%という明確な弱点はあるものの、それが改善された2戦目はオフェンスが爆発。
この2チーム、実は今シーズンの対戦はこれでおしまい。次に顔を合わせることがあるとしたらCSになってきますので、仮に勝ち上がって対戦することがあれば、今節以上に激しい試合になること必至ですね。
ちなみに、次回の試合レビューはどの試合をレビューするかもう決めてあります。「最近、調子が良くなってるあのチーム」です。乞うご期待!
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