今回は2025.4.9に行われた三遠ネオフェニックス対アルバルク東京(以下、A東京)との試合をスタッツなどのデータを中心に振り返ってみましょう。
既にCS出場権を確保した三遠と、中地区2位の座を盤石にしつつあるA東京との試合。試合を深堀って、両チームのCSに向けた戦略を考えてみましょう。
戦前データ
まずは前節の試合を振り返ってみましょう。
12/18の試合データ
基本スタッツ | ||
アルバルク東京 | 三遠ネオフェニックス | |
72 | PT | 82 |
27/71 38.0% | FG | 32/73 43.8% |
8/26 30.8% | 3P | 6/26 23.1% |
10/16 62.5% | FT | 12/19 63.2% |
44 | REB | 46 |
16 | OREB | 15 |
28 | DREB | 31 |
25 | AST | 18 |
15 | TO | 12 |
10 | STL | 11 |
3 | BLK | 5 |
22 | F | 17 |
17 | 被F | 22 |
詳細スタッツ | ||
8 | ファストブレイクポイント | 18 |
34 | ペイントエリア内の得点 | 52 |
6 | PTs Off TO | 13 |
6 | 2nd Chance PTs | 10 |
アドバンスドスタッツ | ||
アルバルク東京 | 三遠ネオフェニックス | |
77.04 | ポゼッション数 | 78.36 |
試合のペース:77.70 | ||
93.46 | Offensive Rate | 104.65 |
104.65 | Defensive Rate | 93.46 |
46.1% | TS% | 50.4% |
43.7% | eFG% | 47.9% |
0.50 | POTE | 0.87 |
48.9% | REB% | 51.1% |
34.0% | OREB% | 34.9% |
65.1% | DREB% | 66.0% |
92.6% | AST% | 52.3% |
16.1% | TO% | 12.9% |
0.93 | PPP | 1.05 |
0.23 | FTR | 0.26 |
三遠の22連勝の連勝街道の序章だったこの試合。その期間中、パワーバランスが互角と言えるチームは、14・15連勝を飾ったエヴェッサ大阪相手くらいしかいなかったので、このA東京戦から連勝の流れを作った試合だったと言えるかもしれません。
そんな三遠の勢いをつけた試合は、シュート効率の差がそのまま試合結果に出た感じでした。2PFGと3PFGの確率を表すeFG%が43.7%ー47.9%と差を付けました。三遠はWエースのデイビッド・ヌワバ選手とヤンテ・メイテン選手のアタックで(確率は良くないながらも)FTを獲得していくイメージが強かったですが、この試合のFTRは0.26と控えめ(この試合までの平均FTR:0.35)。
他の要因を探すとすると、明確にデータが異なるのがASTの項目。A東京はAST%が92.6%と、FGの9割以上がアシストから生み出されていることになります。
このデータをどう見るかでこの試合のA東京の印象はだいぶ変わってきます。良く言えば【パスが上手く回っていた。後はシュートを決め切るだけだった】となるでしょう。ただ、結果として負けてしまったので【FGがアシストに依存していた】と捉えるべきでしょう。
また、A東京にとっては、プレーメイカーのテーブス海選手が12ASTながら5本のTOを犯しています。最近の代表戦では改善されてほとんど無くなりましたが、元々ペイントアタックでDFを収縮させるのは得意ですが、その後の展開に難がある選手だったので、その悪癖が表れていたのかもしれません。
被POTEが1.0を切っているので、ターンオーバー後のケアの意識は比較的高かったのは流石と言うべきですが、ファストブレイクポイントの差がそのまま結果に現れた試合になりました。
三遠ネオフェニックス

三遠は言わずと知れた、今シーズンBリーグを席巻した超攻撃型チーム。平均得点は各地区1位のチームがTOP3ですが、三遠はその中でも2位の宇都宮ブレックスに約7点差をつけてブッチ切りの92.67得点。
先日の第28節では京都ハンナリーズ相手に2連敗するという苦杯を味わいましたが、その後の長崎ヴェルカ戦では2連勝とカムバック。既にCS出場は確定していますが、1stシードの座でCSを迎えたい所です。
オフェンス型のチームらしく、試合のペースもリーグTOPの75.94(※公式と数値が違うのは、計算式を簡素化していたり、OTを考慮しているからです)。ファストブレイクポイントもリーグTOPの合計730得点。速いペースで、得点期待値の最も高いファストブレイクで得点を重ねているチームともあり、FG%もリーグTOPのデータです。
三遠の強みは攻撃の起点が佐々木隆成選手のプレーメイクと、ヤンテ・メイテン選手・デイビッド・ヌワバ選手の1on1能力と多岐に渡るところ。リーグのASTトップランカー(平均6.5AST)の佐々木選手を要しながら、AST%が67.6%とプレーメイカーのASTにオフェンスが頼っていないことが分かります。
そんな三遠には明確な弱点があって、リーグトップのオフェンスを誇りながら、FT%はリーグ最低の67.0%。メイテン選手を中心にFTをガンガン獲得してくるのですが、その効率が悪いのが唯一の弱点でしょうか。
アルバルク東京

Defensive Rateが100.55とリーグトップのディフェンス力を誇るA東京。三遠が最強の矛ならば、A東京は最強の盾と言ったところ。
強固なディフェンス力の裏付けとして特筆されるのが、試合のペースコントロールや2nd Chance PTsへのケアの部分が挙げられます。
1試合当たりのペースは70.46。この数値はリーグでも3本の指に入るレベルに遅いペースです。試合のペースが遅いため、それだけ失点する機会を抑えているということですね。
また、2nd Chance PTsにおいては、1試合の平均失点が9.00失点とかなり強固。勝利している試合に限って集計したら、8.44失点に抑えられています。敗戦時のみにフィルターを掛けても平均10.5失点と、大崩れしない部分も強力なディフェンス力を示しています。
ただ、このチームの課題は明確で、それはシュートの効率。eFG%が50%を割っているので、ペースを遅くしてハーフコートオフェンスを展開しても、期待値が低いため、安定したゲームコントロールが困難になるケースも少なくありません。
メインのプレーメイカーはテーブス海選手とライアン・ロシター選手。個人的にロシター選手の方は比較的安心して見れるのですが、テーブス選手の場合はフラッシーなプレーやパスでコアなファンは多いですが、フィニッシャーに優しくないプレーが多い印象です。
スコアラーとしての期待値はセバスチャン・サイズ選手や小酒部泰暉選手がハイボリュームな選手の中ではTS%がそれぞれ53.0%・56.5%と高い方なので、如何にこの選手たちに効率良く得点をしてもらえるオフェンスを敷けるかがポイントになってきそうです。
戦前比較まとめ
マッチアップの構図としては三遠にA東京が挑んでいく感じ。三遠はFT効率を何とか保って自慢の攻撃力を如何なく発揮したい所。対するA東京は最強の矛を封じ込め、上手くペースコントロールした上で、ハーフコートオフェンスの改善を図りたい所です。
4/9の試合データ
基本スタッツ | ||
三遠ネオフェニックス | アルバルク東京 | |
89 | PT | 67 |
32/62 51.6% | FG | 26/61 42.6% |
10/31 32.3% | 3P | 5/23 21.7% |
15/22 68.2% | FT | 10/15 66.7% |
37 | REB | 34 |
7 | OREB | 6 |
30 | DREB | 28 |
19 | AST | 23 |
9 | TO | 11 |
8 | STL | 4 |
1 | BLK | 0 |
17 | F | 21 |
21 | 被F | 17 |
詳細スタッツ | ||
13 | ファストブレイクポイント | 7 |
40 | ペイントエリア内の得点 | 36 |
15 | PTs Off TO | 14 |
8 | 2nd Chance PTs | 2 |
アドバンスドスタッツ | ||
三遠ネオフェニックス | アルバルク東京 | |
73.68 | ポゼッション数 | 72.6 |
試合のペース:73.14 | ||
120.79 | Offensive Rate | 92.29 |
92.29 | Defensive Rate | 120.79 |
62.1% | TS% | 49.6% |
59.7% | eFG% | 46.7% |
1.36 | POTE | 1.56 |
52.1% | REB% | 47.9% |
20.0% | OREB% | 16.7% |
83.3% | DREB% | 80.0% |
59.4% | AST% | 88.5% |
11.2% | TO% | 14.0% |
1.21 | PPP | 0.92 |
0.35 | FTR | 0.25 |
分かりやすく三遠がA東京を圧倒した試合に。
三遠はFT%こそ高くありませんが、シーズン平均に近い数字なので基本的には計算できるレベルの水準。2PFG%が22/31と70%超の確率なので、インサイドを完全に支配していました。それでいて、FG比率も2P:3Pが31:31と半分ずつで、AST%も59.4%と、ハンドラー自身のショットクリエイトとAST由来のFGもおよそ4:6と、美しささえ感じる強力なオフェンスでした。
対するA東京はハーフコートオフェンスに必要不可欠な3Pシュートの確率が全く上がりませんでした。シューターの安藤周人選手・小酒部選手の3Pはそれぞれ0/4・0/5と起爆剤になることが出来ず。
2桁得点をした選手がスティーブ・ザック選手、サイズ選手、ロシター選手、福澤晃平選手の4人いて、プレーメイカーのテーブス選手も7得点と、得点バランスは良く、2PFGは21/38(55.3%)とこちらも悪くはなかったので、3Pシュートがしっかり決め切れれば、全然戦えていた印象です。
この試合、A東京はエース格のメインデル選手がロスター外でした。本来はスラッシャー・フィニッシャーとして役割を持つ選手がいなかったので、AST%が90%近く、FGのほとんどをASTに頼る形になったのも、三遠との明確な違いだったでしょうか。
まとめ
よくよく考えると、スラッシャーのヌワバ選手、ゴリゴリ系PFのメイテン選手、アスレチックなプレーメイカーの佐々木選手、日本人オールラウンダーの吉井裕鷹選手、シューターの大浦颯太選手と津屋一球選手、ストレッチビッグマンのデイビッド・ダジンスキー選手と役割のオーバーラップがほとんどなく、それでいて選手の粒がそろっているんですよね。こりゃ隙がねぇわ(笑)
普段追っかけている群馬クレインサンダーズでも言えることですが、A東京のようなハーフコートオフェンスで組み立てるタイプのチームは3Pシュートが当たらないとかなりきついですね。
で、3Pが当たらないから得点をしようと、シューターが急にハンドラーとしてドライブし、自らチームオフェンスのシステムを崩していく悪循環に陥るパターン…。
そろそろ、CSが確定するチームも続々出てくるので、各チームの深堀り記事も考えていこうと思います。
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