今回は2025.4.16に行われた広島ドラゴンフライズ対島根スサノオマジックとの試合をスタッツなどのデータを中心に振り返ってみましょう。
戦前データ
前回の対戦時を振り返る前に、まずは両チームの特徴から見て行きましょう。
広島ドラゴンフライズ

現在25勝27敗で西地区5位の広島。CS枠に食い込むには、残り8試合全勝が必須条件で、且つ、他の上位チームが全敗しないといけない状況。昨シーズンの優勝チームでしたが、現実的には今シーズンのCS出場は不可能と言って良いでしょう。
そんな広島というチームの特徴としては、リーグ4位に位置するPOTでの得点。相手のTOを誘発させたあとの得点がリーグでもトップクラスに頻度が高いです。
では、速攻型のチームなのか?と思って、Bリーグ公式の成績によると、ファストブレイクポイントは11.46得点(リーグ12位)と平均より少し上と言ったところ。
この2つのスタッツから読みとれるのは、もちろん、TO→ファストブレイクというシチュエーションもあるでしょうが、TO誘発後のセットプレーに強みを持っている可能性が高いことが考えられます。現在は群馬の指揮を執るカイル・ミリング前HCの名残とも捉えられそうです。
チームとしての強みを持っている広島ですが、弱点は間違いなくディフェンス。Defensive Ratingが109.83で、リーグでもワースト候補には上がる数字です。
特にREBに弱く、平均REB・被REB数を見ても明らか。POTに強みを持っているチームの割にポゼッション数に差が生じないのは、このREB項目との差し引きでポゼッションをトントンにさせている感じです。
被FG%も46.1%とかなりの確率で決められていますが、2PFG%においては55.2%。2PFGのシチュエーションはドライブ・OREB→2nd Chance PT・ファストブレイクと考えられますが、被POTEが1.21、被2nd Chance PTs/被OREBが0.98と比較的高い水準なので、ありとあらゆるシチュエーションでのディフェンスの弱さが垣間見えます。
島根スサノオマジック

西地区33勝19敗で2位につけている島根。西地区2位をほぼ盤石にしつつあるチーム。
このチームの強みは平均得点80点超、Offensive Ratingも110.99というリーグでも上位の攻撃力を誇っています。平均得点が2ケタの選手が以下のように5人います。
- コティ・クラーク選手:14.9得点
- 安藤誓哉選手:16.8得点
- ニック・ケイ選手:13.2得点
- ジェームズ・マイケル・マカドゥ選手:13.0得点
- エヴァンス・ルーク選手:10.1得点
これらの選手以外にも中途加入のアレックス・マーフィー選手が7.9得点、津山尚大選手が7.7得点と、リザーブの選手も攻撃力が衰えない強さがあります。
ただ、敢えてチームの弱点を言うのであれば、スタッツ上、PGが1stオプションになっているチームであることが読み取れますが、そのPGの確率があまりよくありません。
リザーブの津山選手はFG%:34.9%(2.7/7.6)・3P%:34.0%(1.7/5.0)、スターターの安藤選手もFG%:41.0%(5.9/14.5)・3P%:30.6%(2.1/6.8)と1stオプションの選手としてはかなり確率が悪いです。FTRもそれぞれ0.14、0.23と高くないので、「アグレッシブにプレーしているようで実はそうではない」という印象を受けます。
逆にウイングの外国人選手は軒並みシュート効率が良く、ニック選手に至っては52.2-38.5-87.6とエリート級の得点効率とされる【50-40-90】に迫るスタッツを持っています。
チームとしてはPGの効率性に左右されやすそうな大味なチームという印象。安藤選手や津山選手のスタッツに注目したい所です。
戦前比較まとめ
以上をまとめると、両チームの勝利のカギは以下の通り。
- 広島ドラゴンフライズ
- POTという強みを出していけるか。
- REBを始めとしたディフェンスをしっかり機能させられるか。
- 島根スサノオマジック
- PGのゲームメイク。PGにFGが偏るのか、それともシェアするのか?
チームとしての実力は間違いなく【広島<島根】という構図でしょう。挑む形の広島としては、島根のPGの効率性の低さを逆手に取りたい所。PG以外の選手に対するオフボールディフェンスが機能するかが重要でしょう。
4/16の試合データ
基本スタッツ | ||
広島ドラゴンフライズ | 島根スサノオマジック | |
79 | PT | 84 |
30/70 42.9% | FG | 30/74 40.5% |
11/32 34.4% | 3P | 13/33 39.4% |
8/12 66.7% | FT | 11/15 73.3% |
39 | REB | 47 |
10 | OREB | 16 |
29 | DREB | 31 |
18 | AST | 24 |
11 | TO | 10 |
5 | STL | 7 |
2 | BLK | 6 |
16 | F | 21 |
21 | 被F | 16 |
詳細スタッツ | ||
7 | ファストブレイクポイント | 20 |
28 | ペイントエリア内の得点 | 28 |
8 | PTs Off TO | 11 |
7 | 2nd Chance PTs | 19 |
アドバンスドスタッツ | ||
広島ドラゴンフライズ | 島根スサノオマジック | |
76.28 | ポゼッション数 | 74.60 |
試合のペース:75.44 | ||
103.57 | Offensive Rate | 112.60 |
112.60 | Defensive Rate | 103.57 |
52.5% | TS% | 52.1% |
50.7% | eFG% | 49.3% |
0.80 | POTE | 1.00 |
45.3% | REB% | 54.7% |
24.4% | OREB% | 35.6% |
64.4% | DREB% | 75.6% |
60.0% | AST% | 80.0% |
12.7% | TO% | 11.0% |
1.04 | PPP | 1.13 |
0.17 | FTR | 0.20 |
下馬評通り、島根が広島に勝利。ただ、スタッツを見ていくと、「広島相手でも、チームの平均以上のパフォーマンスを上げられないのか」という島根側へのネガティブな印象を受けました。広島ブースターの人、ゴメンね。
まず、島根側の視点で見ていくと、第1Qに33-21で突き放し、その後はそれなりに点差を保持したまま勝利した感じです。その第1Qには、この試合でローテーションとして出場した8選手全員が出場し、全員がFGAを記録。その内、北川弘選手のみ得点がなかったものの、それ以外の7人の選手が得点を記録していました。
第1QトータルでのFG%は61.9%(13/21)、3P%は75.0%(6/8)と素晴らしく、ASTもこの試合の半分近くの10本を記録し、上手くボール・シュートをシェア出来ていたQでした。
ただ、第2・3Qでは一変。1stオプションの安藤選手が0/4、3/8と乱発モードに。加えて、試合を通じてFTAが0本だったので、あくまで単なる印象ですが、「俺、点獲りたい!!」というエゴが出てしまっている感が匂ってきそうです。それでFTA:0本はオフェンスを停滞させてしまいますね。
戦前、広島のディフェンス力の低さに言及しましたが、オフェンス力に強みを持つ島根なら、点差はともかく、90点中盤は獲れてもおかしくなかったと思っていますが、FG%・TS%・eFG%がチーム平均を下回り、勝ちはしたものの、自身の強さを存分に発揮したとは言えなそうです。
そういう意味では第1Qの島根は相当強かったですから、それを(40分ずっとは無理なので)他の時間帯でも展開できるようなチームに、CSに向けてなってもらいたいです。
対する広島は、点差こそ5点差と僅差で、一時は逆転も果たしたものの、ファストブレイクポイントで20失点、2nd Chance PTsで19失点と、チームとしての弱みを全面的に出してしまいました。
特にファストブレイクポイントでの失点の多さは致命的で、相手にとって最も期待値の高い得点シチュエーションを簡単に与えてしまっていることになります。
オフェンス面では2ケタ得点がケリー・ブラックシアーJr選手(17得点)とドウェイン・エバンス選手(21得点)だけだったものの、他3選手が9得点と、島根同様、得点のバランスはPPP:1.04からも分かる通り良かったと思うので、ディフェンスが足を引っ張った試合でした。寧ろ、ディフェンスさえしっかり機能していたら勝てた試合だったでしょう。
まとめ
試合を振り返ると、お互いに自分の弱みを見せあった試合になり、島根にとっては結果程良い試合ではなかったと思います。
尚、これで島根は34勝19敗。残り7試合で、島根が1勝、大阪・京都がそれぞれ1敗した時点で島根の西地区でのCSストレートインが確定します。恐らく、このまま島根が西地区2位でほぼ確定かと思いますが、それが緩みになってCSまで引きずらないようにしたい所です。
逆に広島は25勝28敗。ワイルドカード枠2位の群馬が34勝19敗なので、残り7試合全勝してもCS枠には入れないことが確定しました。
ただ、市川真人選手・中村拓人選手・渡部琉選手・三谷桂司朗選手といった、次世代を担う23~24歳の世代の選手がこんなにもいるので、残りのシーズン、自身の成長のための糧にしていってもらいたいと思いますね。
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