2025.1.25~1.26の2日間にかけて行われた、琉球ゴールデンキングスと宇都宮ブレックスの試合レビューをしていきましょう。
両チームとも所属地区で1位に位置する強豪チーム同士の対決。果たしてどうなったでしょうか?
戦前データ
前述したように琉球ゴールデンキングスは西地区1位、宇都宮ブレックスは東地区1位の座に座っています。ポストシーズンでも戦う可能性の高い両チームなので、この試合はその後の行く末を占ううえでも重要な1戦でしょう。
琉球ゴールデンキングス


琉球はチームの平均リバウンドが45.40本とリーグ1位。しかも、2位のアルバルク東京が39.9本なので、これはぶっちぎりの1位の数値です。
その中でも特筆すべきはOREBの強さで、OREB%が39%超とかなり高い数値です。自軍のオフェンスポゼッション時に4割弱リバウンドを取ってセカンドチャンスを生み出しているわけですから、これは相手からしたら脅威の数値です。
チームのインサイドを支えているのはジャック・クーリー選手ですが、OREBが4.3本とリーグ1位。その上、リム周りのFG%がこれまた驚異の73.4%(72/98)!得点期待値であるEPSは1.468とかなりの高水準を誇っています。

地区1位の勝率のチームですが、敢えて負けパターンの分析をするなら、第1Qや第3Qの得失点差が大きくなると勝ち星をスルリと逃してしまうことがあります。それぞれのクオーターは前後半のスタートなので、そこで上手く波に乗れないと苦しい戦いになっている印象です。
あと、リバウンドを支配しているにも関わらず、案外ロースコアゲームに弱い面もあります。eFG%が50%未満という低い水準にあるため、どうにもこうにも点が入らなかった時のクリエイティビティが弱いのかもしれません。
例えば、【両チームが70点以下の得点だった試合】をロースコアゲームと定義すると、以下のような成績になります。
- 12/14秋田:●63-67
- 12/15秋田:○70-59
- 12/21@FE名古屋:●58-62
計3試合とスモールサンプルですが、ロースコアゲームでは1勝2敗となっています。琉球としては、セカンドチャンスを確実にモノにして、得点を重ねていきたいところです。
宇都宮ブレックス


対する宇都宮は前述の琉球とは真逆のチームで、REB%が50%を下回っており、チームとしてのリバウンド力は相手よりも劣るものの、PPPが1.17、TS%が59.0%、eFG%が56.5%とかなり効率の良いバスケットボールを展開しています。
この効率の良さは、比江島慎選手やDJ・ニュービル選手などの中心選手(※)の平均年齢が31歳と、ベテランの多いチームであることが影響しているでしょう。
※前節までの出場試合数が20試合を越えている選手を【中心選手】と定義。
アシスト数がリーグ6位と上位ですが、僅かに20本に届かない19.9本とリーグ平均18.86本よりちょっと上という数字なので、如何に各選手のショットクリエイション能力が高いかを表しています。
その中心となっているのが、先に挙げた比江島慎、DJ・ニュービルの両選手。

比江島選手はやや右サイドの3Pの効率やアテンプトが少ないのが気になりますが、それでも流石のショットチャート。美しいほど現代バスケの潮流に則った【ペイントエリアと3P】というSGの理想形に感じます。

ニュービル選手もPGらしいトップとウイングからの3Pとペイントエリアにチャートが偏っていますね。
また、ニュービル選手はBリーグには珍しい外国籍登録のPGで193cm/96kgの恵まれた体格を有した選手。180cm前後の日本人選手が務めることが多いPGのポジションではひと際異彩を放つ選手です。
その影響は絶大で、リバウンドはPGの選手に限定するとトップの5.8本。DREBは2位のレイナルド・ガルシア選手(佐賀)の3.9本を1本以上上回る5.0本。ニュービル選手がDREBを奪って、そのままボールプッシュし、トランジションで得点…、というシーンが容易に浮かびますね。
宇都宮は琉球と違って割と隙がないので、負けパターンを探るのは正直難しいですが、強いて言うなら接戦を落としがち、もっと踏み込むと、第4Qに追い上げられると、そのまま捲られてしまうというところでしょうか?
最終スコアが5点差以下、第4Qの得失点差が0点以下の試合をピックアップしてみます。
- 10/19@仙台:○76-72(21-21)
- 11/6@茨城:○89-84(21-30)
- 11/30渋谷:●74-79(8-19)
- 12/18@越谷:○71-69(10-17)
- 12/21名古屋DD:●83-85(18-19)
- 12/22名古屋DD:○91-90(19-25)
前述の通り、ベテランが多いので試合巧者かと思いきや、ガス欠して追い上げられるというベテランの悪いところが時々出てきます。
上記の基準が満たされていないものの、12/8@横浜BCの試合は酷くて、第3Q終了時に59-51でリードしていたものの、第4Qで13-29と大失速し、72-80で大捲られした試合もありました。その時の宇都宮ブースターの心境や如何に…、と言ったところ。
戦前比較のまとめ
琉球としてはリバウンドの強みを生かして、尚且つ、セカンドチャンスポイントを確実に取りたい。
対する宇都宮は効率の良いオフェンスを展開し、ニュービル選手を中心としたトランジションオフェンスを展開したい。
以上のような両チームの思惑を考慮して試合のデータ分析をしていきます。
1/25の試合データ
基本スタッツ | ||
琉球ゴールデンキングス | 宇都宮ブレックス | |
86 | PT | 105 |
31/71 43.7% | FG | 39/69 56.5% |
8/31 25.8% | 3P | 18/38 47.4% |
16/20 80.0% | FT | 9/11 81.8% |
29 | REB | 41 |
16 | OREB | 17 |
13 | DREB | 24 |
21 | AST | 23 |
7 | TO | 13 |
7 | STL | 3 |
3 | BLK | 3 |
17 | F | 16 |
16 | 被F | 17 |
詳細スタッツ | ||
琉球ゴールデンキングス | 宇都宮ブレックス | |
12 | ファストブレイクポイント | 10 |
40 | ペイントエリア内の得点 | 34 |
14 | ターンオーバーからの得点 | 15 |
16 | セカンドチャンスポイント | 22 |
アドバンスドスタッツ | ||
琉球ゴールデンキングス | 宇都宮ブレックス | |
70.8 | ポゼッション数 | 69.84 |
試合のペース:70.32 | ||
121.47 | Offensive Rate | 150.34 |
150.34 | Defensive Rate | 121.47 |
41.4% | REB% | 58.6% |
40.0% | OREB% | 56.7% |
43.3% | DREB% | 60.0% |
1.21 | PPP | 1.50 |
0.28 | FTR | 0.16 |
地区1位同士の強豪チームの試合でしたが、この試合は明確に宇都宮が上に立った試合になり、本来、琉球の強みであったはずのリバウンドは宇都宮を下回りました。
OREBは1本差なので、一見差が無かったようにも見えますが、宇都宮のDREB%が60.0%と高水準。つまり、琉球のオフェンスリバウンドシチュエーションでは6割、宇都宮にディフェンスリバウンドを奪われたことになります。
その結果、セカンドチャンスポイントで16-22と大きく差を付けられてしまいました。
宇都宮にとしては、PPPが1.50と流石の高効率オフェンス。琉球も1.21と決して低い数字ではありませんが、やはり、3Pの成功数が多い宇都宮に軍配が上がりました。
また、この試合で宇都宮が強かったのはターンオーバーからの得点です。こちらも一見、1点差ではありますが、琉球は13回のターンオーバーを誘発させて14得点なのに対し、宇都宮は7回のターンオーバーを誘発させての15得点です。こういうところにも効率の良し悪しが見えてきますね。
1/26の試合データ
基本スタッツ | ||
琉球ゴールデンキングス | 宇都宮ブレックス | |
97 | PT | 88 |
34/63 54.0% | FG | 28/64 43.8% |
11/27 40.7% | 3P | 14/44 31.8% |
18/24 75.0% | FT | 18/23 78.3% |
38 | REB | 30 |
9 | OREB | 8 |
29 | DREB | 22 |
21 | AST | 19 |
11 | TO | 11 |
5 | STL | 8 |
2 | BLK | 0 |
22 | F | 22 |
22 | 被F | 22 |
詳細スタッツ | ||
琉球ゴールデンキングス | 宇都宮ブレックス | |
13 | ファストブレイクポイント | 12 |
36 | ペイントエリア内の得点 | 26 |
18 | ターンオーバーからの得点 | 11 |
9 | セカンドチャンスポイント | 7 |
アドバンスドスタッツ | ||
琉球ゴールデンキングス | 宇都宮ブレックス | |
75.56 | ポゼッション数 | 77.12 |
試合のペース:76.34 | ||
128.37 | Offensive Rate | 114.11 |
114.11 | Defensive Rate | 128.37 |
55.9% | REB% | 44.1% |
29.0% | OREB% | 21.6% |
78.4% | DREB% | 71.0% |
1.28 | PPP | 1.14 |
0.38 | FTR | 0.36 |
前戦は宇都宮の強さが際立ちましたが、1/26の試合は比較的自力伯仲という印象になりました。
琉球としては前の試合の敗因となったOREB%とセカンドチャンスポイント、ターンオーバーからの得点の部分で改善。特にセカンドチャンスポイントにおいては、OREB9本に対して9得点。OREB1本あたり1.0点と、まぁまぁ悪くない数値に落ち着きました。
宇都宮のスタッツを整理してて驚いたのが3P試投数の多さ。1/25の時も2Pと3Pの試投数の比率は31:38と3Pの方が多く、チーム平均のスタッツを振り返っても31.1:33.5とおよそ半々。
しかし、1/26の試合での比率は20:44と3Pが2Pの倍以上を試投していました。過去の試合では1/4の@佐賀戦でも2PFG:3PFGが20:40となっていた以外は、多くなっても2PFGよりも10本弱という試合が多かったです。そういう意味では、宇都宮にとっては「いつものバスケではなかった」と言えるかもしれません。

ショットチャートを見比べてみると違いは一目瞭然。琉球はペイントエリア内に固まりつつも、概ねコートの全体を使ったオフェンス。対して宇都宮はキレイに3Pとペイントエリアに分かれていました。
現代バスケでは【ペイントエリアと3P】と言われるくらいで、得点期待値の低いミッドジャンパー(ペイントエリア外の2Pシュート)は選択の悪いシュートと言われることもありますが、1試合の中で何本かは必要なシュートだと思います。
この試合は琉球ディフェンスが宇都宮のショットセレクションに上手く対応した試合で、その上でDREBを支配した試合だったと言えるでしょうか。
まとめ
今回から詳細スタッツ欄を増やしてみましたが如何だったでしょうか?個人的にはその分も含めて色々と分析できたと思います。これからますます分析が楽しくなりそうです。
特に、今回の琉球✕宇都宮のような実力伯仲のチーム同士の試合を分析する時には面白いですね。
ちなみに、次回レビューする試合は決まっています。こちら↓

推しチームの群馬と最近調子を上げてきている越谷の試合も捨てがたかったんですが、今回は同地区のライバル、渡邉雄太選手VS比江島慎選手の構図も面白いし、開幕節で千葉が2連勝してるため、宇都宮としてはリベンジをしたい試合だろうということで、相当アツい試合になると期待しているのでこの試合をレビューすることにしました。
あなたはどちらが勝つと思いますか?^^
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