2025.2.1〜2.2にかけて行われた、ファイティグイーグルス名古屋(以下、FE名古屋)と群馬クレインサンダースの試合レビューをしていきましょう。
尚、今回からアドバンスドスタッツとして成功したFGに対して、どれだけの割合がアシストによって生まれているかを示す指標である【アシストパーセンテージ(AST%)】を取り入れることにしました。
また、相手のFGがどれだけ相手のアシストによって生まれているのかを示す指標として、【被AST%】も採用しています。これによって、より詳細な分析を行っていきます。
戦前データ
FE名古屋は戦前時点で中地区6位。直近では千葉ジェッツに2連敗、愛知ダービーだった前節の三遠ネオフェニックス戦では惜敗ながらも100失点ゲームで敗戦と、チーム状況的にはあまり良いとは言えません。
対する群馬は年明け7勝2敗と好調で戦前時点で東地区2位。ここの2戦も取って地位を盤石にしたいところです。
FE名古屋


FG%はやや平均的ですが、得点効率はそこまで良くもなく、DF Rateが108点台とディフェンスもそこまでよくありません。ただ、これはあくまで今シーズン全体の平均を見ているだけなので、それだけではこのチームの傾向を解明するには至りません。
と言うのも、今シーズンのFE名古屋のスタッツを整理していて「勝ち方・戦い方が分かっていないチーム」という印象を受けたからです。FE名古屋というチーム、とにかくNet Ratingが安定しません。グラフ化するとこんな感じ。

強いチームの場合、上に振れるのはともかく、下振れを如何に少なくしているかというところで優劣が付くものですが、FE名古屋においては【ちょっと浮いては沈み】を繰り返しています。
ここに、そのチームの「色」が見えやすいポゼッション数を併せてみましょう。

この2つのデータを見比べてみると、ポゼッションを増やしていって「勝てる!」と思っていたら負けてしまったり、減らして安定したと思っても勝てない。ポゼッションを増やして違いを生み出して勝ってもその場しのぎで、また次の試合では負ける…。
ゲームをコントロールして主導権を握るのか、イケイケ押せ押せでオフェンスでもディフェンスでも攻め続けるのか、中々アイデンティティが築けていないチームという印象でした。
ただ、そんな中、潮流が変わりだしたのが12/21の琉球ゴールデンキングス戦から。2連戦だった12/22では負けてしまいますが、Defensive Rateが安定しだしていました。12/21からオールスターまでの8試合で6勝2敗。それまで2連勝がやっとだったチームが5連勝あげることもあり、ようやく波に乗れてきました。
…と言い切りたかったですが、オールスター明け後、前述したように千葉・三遠相手に3連敗中。いずれも強豪チームでしたが、オフェンス面ではいずれの試合もFG:47%前後、1/25千葉・1/29@三遠ではOffensive Rate:115点以上とオフェンスの調子は良いため、またディフェンスを安定させていきたい所です。
群馬クレインサンダース


筆者の推しチームなのに、試合レビューでは5節ぶりの登場の群馬。相手のFE名古屋とは対照的に、相変わらずかなり安定したシーズンを送っています。その背景には、チームの中心選手が、基本的に何かに尖っている選手が少なく、役割は各自にあれど、全員がバランスよくチーム・試合を構築しているのが特徴のチームだと思います。それでいて勝てているんだから、それが正義なんです。
以前の記事やSNSでの発信などで、筆者がこのチームを表現するのが、「パッシングに強みをもっているチーム」と表現していますが、それを裏付けるのがASTの項目。AST%が69.6%と、FGの7割がASTから生み出されていることになります。チームの平均ASTは20本に満たない平均的な水準ではありますが、それはポゼッション数が少ないからなので問題ありません。
それでいて、チームのASTリーダーはトレイ・ジョーンズ選手の4.4ASTなので、チーム全体が戦術を理解していることが伺えます。そういう意味では、昨シーズン広島ドラゴンフライズを優勝に導いたカイル・ミリングHCのストラテジストとしての手腕の賜物とも言えますね。
ただ、3P好調のチームの中、気になるのは辻直人選手。序盤の活躍があったため、まだ3Pランキングのトップ層選手ではありますが、12月中盤以降、12/29のA東京戦で4/4と爆発したものの、それ以外は3P成功数が1試合1本のみが多く、0本ということもありました。
辻直人選手の3P(2024.12.1前後の平均比較)
- 12/1以前:2.86/5.33本 53.8%(合計:43/80本※15試合)
- 12/1以降:1.50/4.56本 32.9%(合計24/73本※16試合)
チーム自体は勝てているので良いのですが、やはり、今後優勝などを目指すにあたって、辻選手の3Pの精度は必要不可欠な要素です。
戦前比較まとめ
FE名古屋は課題のディフェンスを修正して試合に臨みたい所。
対する群馬はこれまで通りの自分たちのパッシングバスケでFE名古屋ディフェンスをキリキリ舞いさせたい所です。推しとして願うのは辻選手の3Pの復調にも期待したいですね。
2/1の試合データ
基本スタッツ | ||
FE名古屋 | 群馬クレインサンダース | |
75 | PT | 91 |
29/72 40.3% | FG | 32/55 58.2% |
4/27 14.8% | 3P | 13/23 56.5% |
13/21 61.9% | FT | 14/20 70.0% |
33 | REB | 39 |
16 | OREB | 8 |
17 | DREB | 31 |
15 | AST | 23 |
7 | TO | 16 |
9 | STL | 2 |
1 | BLK | 7 |
20 | F | 22 |
22 | 被F | 20 |
詳細スタッツ | ||
17 | ファストブレイクポイント | 7 |
42 | ペイントエリア内の得点 | 34 |
14 | ターンオーバーからの得点 | 10 |
14 | セカンドチャンスポイント | 7 |
アドバンスドスタッツ | ||
FE名古屋 | 群馬クレインサンダース | |
72.24 | ポゼッション数 | 71.80 |
試合のペース:72.02 | ||
103.82 | Offensive Rate | 126.74 |
126.74 | Defensive Rate | 103.82 |
45.8% | REB% | 54.2% |
34.0% | OREB% | 32.0% |
68.0% | DREB% | 66.0% |
51.7% | AST% | 71.9% |
1.04 | PPP | 1.27 |
0.29 | FTR | 0.36 |
この試合に注目する1つの指標だったのが、FE名古屋側のDefensive Rate。直近3試合同様に高い数値が算出されているので、この試合も同チームにとってはディフェンスに難があった試合だったと言えるでしょう。
ただ、1つ収穫があったとしたら、群馬のTOを16本も誘発したこと。ターンオーバーからの得点が14得点と、TO1本あたり0.88得点と群馬側のミスを上手く活かせませんでしたが、STLも9本奪っているので、結果が出なかっただけで実は光明なのかもしれません。
そんなTOを連発していた群馬ですが、そのTOを減らせればもっと楽に勝てていたでしょう。少ないFGAで確率良く勝利を収めたことは称賛に値しますが、FGAが少なかったのはTOや被STLが多かったことが背景として考えられます。
それでもやはり流石なのが貫いたパッシングスタイル。ASTの合計は23本でAST%は71.9%とシーズン平均よりも高い水準。その中でこの試合のASTリーダーはプレーメイカーの藤井祐眞選手ではなくセンターのケーレブ・ターズースキー選手の7本でした。
他にも藤井選手が4本、コー・フリッピン選手が5本のアシストを記録するなど、ローテーションとして出場した10人の選手の内、8人がアシストを記録しました。チーム全体でPPP:1.27という高効率なオフェンスを展開するためのIQが備わっているのだと、改めて誉れ高いです。
ただし、両チームとも2戦目の前に課題が残った試合であることに違いはありません。FE名古屋は変わらずディフェンス、群馬は分かりやすくTOを減らしていきたい所ですね。
2/2の試合データ
基本スタッツ | ||
FE名古屋 | 群馬クレインサンダース | |
89 | PT | 80 |
28/52 53.8% | FG | 28/68 41.2% |
7/22 31.8% | 3P | 11/26 42.3% |
26/34 76.5% | FT | 13/20 65.0% |
32 | REB | 39 |
7 | OREB | 18 |
25 | DREB | 21 |
19 | AST | 19 |
13 | TO | 15 |
6 | STL | 8 |
0 | BLK | 0 |
20 | F | 26 |
25 | 被F | 20 |
詳細スタッツ | ||
14 | ファストブレイクポイント | 8 |
40 | ペイントエリア内の得点 | 34 |
22 | ターンオーバーからの得点 | 10 |
7 | セカンドチャンスポイント | 19 |
アドバンスドスタッツ | ||
FE名古屋 | 群馬クレインサンダース | |
72.96 | ポゼッション数 | 73.80 |
試合のペース:73.38 | ||
121.98 | Offensive Rate | 108.40 |
108.40 | Defensive Rate | 121.98 |
45.1% | REB% | 54.9% |
25.0% | OREB% | 41.9% |
58.1% | DREB% | 75.0% |
67.9% | AST% | 67.9% |
1.22 | PPP | 1.08 |
0.65 | FTR | 0.29 |
この試合はFE名古屋が勝利を収めました。勝因はスタッツをパッと見た印象はFTの獲得数でしょう。
試合を観戦したり、プレーbyプレー(Bリーグ公式結果では「テキスト速報」と表記)を見ている人は「FE名古屋が獲得したFTの後半8本は群馬が試合終了間際に仕掛けたファウルゲームによるものだから、それが無ければそこまで差が無かったのでは?」と思う人もいるかも知れません。
しかし、そのFTが無かった場合(19/26)であってもFTRが0.5と高水準であることは変わりません。ファウルゲームになる以前からアーロン・ヘンリー選手が8/10、ショーン・オマラ選手が8/11と多くのFTを獲得して、高確率に決めていたのが勝因の1つでしょう。
また、勝敗を分けた要素として挙げられるのが、やはり1戦目同様にTO。
両チームとも少なくないTOを喫していましたが、TO1本あたりの得点を算出すると、群馬が0.77得点に対し、FE名古屋はそのほぼ倍の1.47得点。特にSTLのみに限ると、FE名古屋はSTL1本あたりの得点が3.67得点とほぼ全てのSTL後ポゼッションで得点していたことが見えてきます。

スコアチャートを眺めると分かるのが第3Qの逆転時の得点推移。第3Q終盤から第4Q序盤にかけて、群馬の得点が無いことが分かります。群馬のようなセットオフェンスやパッシングゲームに強みを持っているチームは、相手のアジャストが効いた時に脆くなる傾向があります。故に、この辺からFE名古屋のディフェンスがアジャストしてきたと捉えることが出来るでしょう。
本当なら、そうなった時の打開のためにトレイ・ジョーンズ選手がいるのですが、今節はコンディション不良のため欠場とのことでした。
また、硬いディフェンスが売りの群馬でしたが、FE名古屋のアグレッシブなプレーにファウルで止めるしかなくなってしまったのが手痛かった。と言うより、FE名古屋の面々をたたえるべきなのでしょうか?
まとめ
今節2試合を分析した感じでは、1勝1敗で終えたものの、群馬の方がやや先行き不安になる結果になりました。オフェンスをアジャストされないようにすることも重要ですが、それ以上にTOからの失点を出来る限り改善していってほしいところですね。
まだ完全にデータとして持っていませんが、CSで対戦するであろう各地区の上位チームはTOからの得点効率がどこも高い印象なので、短期決戦では致命傷に成りかねません。
ちなみに、戦前に気にしていた辻選手の3Pですが、この2試合こんな感じ。
- 2/1:2/3(66.7%)
- 2/2:1/4(25.0%)
総合すると3/7で40%は超えているので、辻選手の今シーズンのスタンダードを考えれば【良寄りの可】という感じなのですが、2/2の試合に関しては2PTのFGが0/5と大不調。
どういうシチュエーションだったのかはスタッツを見るだけでは分かりませんが、まだ調子は戻っていないような印象を受けます。この人の復調も地味に今後のカギだと思ってるので、是非頑張って欲しいです。
あ、FE名古屋は早くチームとしてのアイデンティティを構築しましょう。もうシーズンも半分終わってますからね。