アジア杯予選も無事?終わって、B1リーグも2/28~再開。今回は2025.3.1~3.2にかけて行われた、シーホース三河と千葉ジェッツの試合をレビューしていきましょう。
なお、今回から新たなデータとして、以下の指標を追加しました。
- PTs Off TO:ターンオーバーからの得点
- 2nd Chance PTs:主にOREB後の得点
- POTE(PTs Off TO Efficiency):1TO当たりの得点
- TO%(Turn Over%):ポゼッション当たりのTOの割合
戦前データ
現在CSのワイルドカード枠争いで1位(三河)と2位(千葉)なので、この地位を確実にしていきたい両チームの対戦です。
今シーズン折り返しは過ぎましたが、別地区の両チームということで、今シーズン初顔合わせ。まずは両チームのデータを見て行きましょう。
シーホース三河


現在、中地区3位ながら、2位のアルバルク東京と勝率が同率の三河。得失点僅か49点の僅差で迫っています。
そんな三河ですが、攻撃力・守備力共に優れた強豪チーム。オフェンス・ディフェンス両面でのRatingがリーグの平均よりも優秀な数値を示しています。
あくまで「どちらかと言えば」という前提ですが、AST%が70%を下回っていることから、パスなどのボールムーブメント主体と言うよりは、ハンドラーのアイソレーションから展開が始まるバスケという印象です。
ロスター像としても、スコアラーであるダバンテ・ガードナー選手やジェイク・レイマン選手、西田優大選手らにアシストが付いていることが多いです。
- ダバンテ・ガードナー:15.6PT、3.5AST
- ジェイク・レイマン:14.7PT、2.3AST
- 西田優大:8.9PT、2.7AST
これでシューター陣の確率も上がると鬼に金棒なのですが、明確なこのチームのシューターである須田侑太郎選手の3P%が案外上がっていません(32.2%)。日本代表候補にも選ばれた須田選手なので、各チームの警戒が強いことが伺えます。
他のシューターとしては、角野亮伍選手が41.3%(FG:1.9/4.5に対し、3P:1.4/3.3)、石井講祐選手も41.3%(FG:1.5/3.3に対し、3P:1.0/2.4)と優秀な成績を残しているのですが、オンコートバランスの問題なのか、ディフェンスが穴になりやすい選手達なのか、いずれの選手も出場時間が15分に満たず、スポットとしての役割しか与えられていない印象です。
チームとしての3P%が32.8%とやや低めなのにも関わらず、PPP1.12は驚異的。スコアリングハンドラーの能力の高さで補って余りあるチームと言えるでしょう。
千葉ジェッツ


千葉は現在東地区3位。CSワイルドカード枠の2位には位置していますが、3位のサンロッカーズ渋谷は今節、横浜ビー・コルセアーズと、4位の名古屋ダイアモンドドルフィンズは佐賀バルーナーズといった、お世辞にも強豪チームとは言えないチームとの対戦。今節で2連敗、渋谷と名古屋DDが2連勝してもひっくり返りはしませんが、それでも立場を盤石としたいはず。
そんな千葉はシーズン序盤から中盤にかけてケガ人続出で苦しいシーズンをこれまで送ってきましたが、2月に入り、インサイドの柱であるジョン・ムーニー選手が復帰したことで、開幕戦の10/5宇都宮戦以来の【完全体千葉ジェッツ】が戻ってきました。
それ以降、下位チームの横浜BC・広島ドラゴンフライズながらも、3勝1敗と好調。渡邊雄太選手(206cm)、DJ・ホグ選手(207cm)、ムーニー選手(206cm)のビッグラインナップが猛威を振るいそうです。
また、個人的に注目したいのはやはり渡邊選手。先日、渡米~NBA挑戦~Bリーグ参戦に至るまでの自著を出されていましたが、その中で強調されていたのは「バスケットボールをプレーする楽しさ」でした。その楽しさを思い出したのか、Bリーグのバスケにようやくアジャスト出来たのか、オールスター(AS)明け(1/25)から調子のギアが上がってきた感じがあります。
分かりやすいデータを提示してみましょう。
- AS以前(17試合)
- 平均得点:13.6Pt
- FG:4.7/12.4(33.6%)
- 3P:1.5/5.2(29.2%)
- AS後(7試合)
- 平均得点:16.7Pt
- FG:6.6/11.9(55.4%)
- 3P:1.6/4.3(36.7%)
試投数は若干減っているものの、それ以上に効率性の向上が目覚ましいです。NBA時代からあまりドライブからの得点の期待値はあまり高くありませんでしたが、フィニッシュ能力が向上してきていますね。
なお、渡邊雄太選手の最新の自著はこちらになります。チームメイトとなった富樫勇樹選手や現在、宮崎・延岡学園バスケ部のHCを務める渡邉選手の親友とされる楠元龍水氏、お母さまである渡邉久美さんの手記も掲載されています。興味のある方は是非購入してみてください。
戦前比較まとめ
チーム比較の印象ではどちらのチームもそのポゼッションのハンドラーによるアイソレーションバスケからの展開になりそうです。ただ、Ratingの比較では明らかに三河が優勢です。
- Offensive Rating比較
- 三河:111.98
- 千葉:108.79
- Defensive Rating比較
- 三河:102.03
- 千葉:104.56
ただ、前述したように千葉はようやく完全体として復活したのと、直近の2節が強豪相手ではないことから、フルメンバーでの総力が読みにくいところ。がっぷり四つの好ゲームに期待しましょう。
3/1の試合データ
基本スタッツ | ||
シーホース三河 | 千葉ジェッツ | |
96 | PT | 98 |
34/72 47.2% | FG | 34/62 54.8% |
12/39 30.8% | 3P | 18/31 58.1% |
16/19 84.2% | FT | 12/18 66.7% |
38 | REB | 31 |
17 | OREB | 10 |
21 | DREB | 21 |
17 | AST | 30 |
13 | TO | 14 |
8 | STL | 5 |
3 | BLK | 2 |
19 | F | 18 |
18 | 被F | 19 |
詳細スタッツ | ||
20 | ファストブレイクポイント | 9 |
44 | ペイントエリア内の得点 | 28 |
17 | TOからの得点 | 12 |
17 | 2nd Chance PTs | 12 |
アドバンスドスタッツ | ||
シーホース三河 | 千葉ジェッツ | |
76.36 | ポゼッション数 | 73.92 |
試合のペース:75.14 | ||
125.72 | Offensive Rate | 132.58 |
132.58 | Defensive Rate | 125.72 |
59.7% | TS% | 70.1% |
55.6% | eFG% | 69.4% |
1.21 | POTE | 0.92 |
55.1% | REB% | 44.9% |
44.7% | OREB% | 32.3% |
67.7% | DREB% | 55.3% |
50.0% | AST% | 88.2% |
13.9% | TO% | 16.7% |
1.26 | PPP | 1.33 |
0.26 | FTR | 0.29 |
下馬評通り、ワンポゼッション差のクラッチゲームでした。公式のプレイバイプレイで振り返ると、試合終了残り1:30から三河の怒涛の追い上げが始まっていますね。
また、千葉が4点差に迫られた残り0:30に富樫選手がFTを2本とも失敗、1点差に迫られた残り0:13にはクリストファー・スミス選手もFTを1本失敗(2本目は成功)していた時のファンのそわそわ感と言ったらたまらないものがあったでしょう。
スタッツで振り返っていくと、千葉は3Pが驚異の18/31(58.1%)。その影響もあって、Offensive Ratingは今シーズン最高の132.58。ディフェンスも評価が高い三河相手にこの結果は素晴らしすぎます。
また、千葉に対しても【ハンドラーからのアイソレーションバスケ】と評しましたが、アイソレーション後からの展開にこれまでからテコ入れしたのか、AST%が88.2%とエゲつない数字に。要するに、FGの9割近くがアシストから発生したということになります。
三河は戦前データ通りに、3P%が足を引っ張りました。元々そこまで高くない精度の3Pが、今回の試合では更に低くなってしまいました。
ただ、三河にとって光明なのは、REBで強みを見せていること。千葉のムーニー選手は怪我明けともあって、まだプレータイムに制限があるのか、この日は22:25というプレータイムに。OREB%も45%近く有してますし、何よりファストブレイクポイントとペイントエリア内での得点が大きく上回っています。
ペイントエリア内の得点が44得点ということは、2PFGの22本(FGM34本に対し、3PMが12本)は全てペイントエリア内だったということ。最後の最後、エースのガードナー選手のペイントエリアでのシュートを渡邊選手のクラッチブロックで防がれたとは言え、ペイントエリアは完全に三河が支配していたと言って良いでしょう。
2戦目も同じように支配し、かつ3Pシュートの確率が上がれば全く違った結果になる可能性は十分にあります。
なお、渡邊選手のクラッチブロック↓
3/2の試合データ
基本スタッツ | ||
シーホース三河 | 千葉ジェッツ | |
85 | PT | 68 |
33/75 44.0% | FG | 23/53 43.4% |
7/28 25.0% | 3P | 9/31 29.0% |
12/20 60.0% | FT | 13/15 86.7% |
41 | REB | 33 |
16 | OREB | 4 |
25 | DREB | 29 |
25 | AST | 19 |
5 | TO | 16 |
8 | STL | 2 |
3 | BLK | 4 |
18 | F | 26 |
24 | 被F | 18 |
詳細スタッツ | ||
8 | ファストブレイクポイント | 5 |
48 | ペイントエリア内の得点 | 24 |
19 | TOからの得点 | 0 |
22 | 2nd Chance PTs | 5 |
アドバンスドスタッツ | ||
シーホース三河 | 千葉ジェッツ | |
72.8 | ポゼッション数 | 71.6 |
試合のペース:72.2 | ||
116.76 | Offensive Rate | 94.97 |
94.97 | Defensive Rate | 116.76 |
50.7% | TS% | 57.0% |
48.7% | eFG% | 51.9% |
1.19 | POTE | 0.00 |
55.4% | REB% | 44.6% |
35.6% | OREB% | 13.8% |
86.2% | DREB% | 64.4% |
75.8% | AST% | 82.6% |
5.6% | TO% | 21.2% |
1.17 | PPP | 0.95 |
0.27 | FTR | 0.28 |
第2戦は両チームともあまりシュートの確率が奮いませんでしたが、2nd Chance PTsをしっかりモノにした三河が千葉にリベンジを果たしました。
この試合で特筆すべきは、言うまでもなく一目瞭然ですがTO関連の項目でしょう。
- TO数
- 三河:5本
- 千葉:16本
- TO%
- 三河:5.6%
- 千葉:21.2%
- TOからの得点
- 三河:19得点
- 千葉:0得点
- POTE
- 三河:1.19点
- 千葉:0.00点
17点差という結果からも分かる通り、TOからの得失点差が勝敗を分けました。
千葉というチーム自体、戦前データから分かるように、実は被POTE(自軍のTO1回あたりの失点)がやや高めで、その背景に加えて三河はPOTEが高い相手でした。そういう意味では相性が悪いチームだったということになるでしょうか?
ただ、シーズン序盤はREBリーダーのムーニー選手がいることもあり、どちらかと言えば守備型のチームだと思ってましたが、案外トランジションディフェンスに穴があるチームなのかもしれません。
三河はTO絡みの面で千葉を上回ったのは言うまでもありませんが、前戦と同等にペイントエリアでの得点が48得点、OREB16本に加えて2nd Chance PTsも22得点とインサイドを支配したことが、第2戦の勝利を呼び込んだと言って良いでしょう。
相変わらず、3Pシュートの期待値が高まらないのがキズで、須田選手は0/3、西田選手も0/5と全く奮わなかったのは、次節以降の課題にしてもらいましょう。
まとめ
1勝1敗で星を分けた両チーム。今節を終えての順位はこんな感じ。
- 三河
- 中地区3位→3位(ゲーム差1に後退)
- ワイルドカード枠1位→1位
- 千葉
- 東地区3位→3位
- ワイルドカード枠2位→2位
大きな変動はありませんが、三河は同地区2位のA東京とゲーム差が発生してしまいました。A東京は司令塔のテーブス・海選手が先日のアジア杯予選で一皮剝けた感があるので、今後も調子を延ばしそうな気配。なるべく差が開かないように追いすがっていきたい所です。
あと、個人的にマークしていた渡邉雄太選手のこの2戦の成績はこんな感じ。
- 1戦目
- 17得点、FG:6/10(3P:4/6)、FT:1/3、7REB(OREB2,DREB5)、6AST、2STL、2BLK
- 2戦目
- 18得点、FG:6/14(3P:2/7)、FT:4/4、3REB(DREB3)、2AST、2BLK
FG%は3P%も含めてほぼ5割と期待通りの活躍をしてくれました。2戦目の3REBはやや物足りなかったですが、1戦目のクラッチブロックを含めて両試合とも2BLKを記録しました。今後も渡邊選手には獅子奮迅の活躍を期待したいです。