バスケ観戦がより楽しめるアドバンスド・スタッツ5選

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バスケットボール選手個人の成績を表す「スタッツ」。分かりやすいもので【得点:PTS】【リバウンド:REB】【アシスト:AST】などがありますね。

しかし、選手の能力をより詳細に分析・評価する指標として【アドバンスドスタッツ】というものがあります。このアドバンスドスタッツを知り、理解することで、基本的なスタッツだけでは分からない、選手やチームの隠れた実力を知ることが出来ます。

今回は初心者向けに、知っていると、よりバスケットボール観戦が楽しくなるアドバンスドスタッツを5個紹介していきましょう。

EPS(Expected Points per Shot:得点期待値)

EPSはシュートの位置やシュートの種類に基づいて、そのシュートによって期待される得点を数値化した指標です。この指標を念頭に置いておくことで、その選手のショットセレクションがどれだけ効率的であるかを評価することが出来ます。

計算方法

EPSの計算方法はシュートの位置や種類、過去のシュート成功率によって変わってきますが、算出自体は簡単です。

EPS(得点期待値)=シュート成功率×シュートの得点価値

  • 2ポイントシュートの場合:得点価値は2点。
  • 3ポイントシュートの場合:得点価値は3点。
  • フリースローの場合:得点価値は1点。

例えば、ある選手の3Pシュートの成功率が40%だとすると、その選手の3PシュートEPSは以下のように算出されます。

0.4(=40%)×3点=EPS:1.2点

一般的にEPSは1.0点を超えると、その選手にとって、効率の良いシュートであると評価されます。

上記の計算方法だと3Pシュート全体のEPSになりますが、先に紹介した通り、そのシュートエリアでの計算も可能です。

例えば、下記のようなショットチャートを持った選手がいたとしましょう。

©りそなグループB.LEAGUE

この選手の右ウイングポジションの3Pシュートの確率が35%となっています。この選手の右ウイングポジションの3PシュートのEPSを計算すると…

0.35(=35%)×3=EPS:1.05点

このように、この選手の右ウイングポジションの3Pシュートの期待値は1.05点となり、効率が良いシュートエリアと言えるでしょう。

他にも、色々なパターンに分けて算出することも出来ます。例えばこんな感じ↓

  • ペイントエリアでのEPS
  • キャッチ&シュートでのEPS
  • プルアップジャンパー(ドリブルからのジャンプシュート)のEPS
  • ディフェンスがいる時とフリーの時の3Pシュートえp

この数値によって、その選手の得意とするシュートやプレーが読み取れたりします。

観戦時の活用の仕方、楽しみ方

EPSの指標に基づいての観戦上の楽しみ方と言えば、何と言っても「その選手・チームの効率性」を念頭に置いた観戦が可能です。

例えば、ある選手の3Pシュートがメチャクチャ調子が良くて、6本打って6本成功していたとします。
※そんな選手、つい最近いましたね…。

その時、「ウォー!スゲー!!」とただ盛り上がっているだけではなくて

3PのEPSが1.5あるんだから、もっとガンガン行けー!

流石、ウイングからの3PのEPSが1.3もあるだけのことはあるわね!

逆に相手チームにそれをやられた時には

あの選手の3PのEPS高いんだから、もっと警戒しなくちゃ

他にも、以下のような色々なパターンもあります。

  • 「これまでの3PのEPSは1を下回ってたから、今日だけかもしれない」
  • 「        (同上)        これからの成長に注目しよう」
  • 「なんでローポストのEPSが高いのに、インサイドの選手使わないんだろう?」
  • 「左エルボーのEPS低いのに、良く決め切った!!」

こんな感じで、チームや選手の戦術を予測に活用すると楽しいですよ♪

Free Throw Rate(FTR:フリースロー・レート)

FTRはその選手やチームのフィールドゴール試投数に対して、どれだけフリースローを獲得しているかを示す指標です。

選手個人にとってのこの指標は、その選手のアグレッシブさやドライブ能力、ファウルを誘発する能力を評価する指標です。故に、どちらかと言うと、チームよりもその選手個人に関わる指標と捉えて良いでしょう。

計算方法

冒頭に説明した通りですが、FTRも算出方法はかなり簡単です。

FTR=フリースロー試投数(FTA)÷フィールドゴール試投数(FGA)

例えば、この記事を作成している2024年12月7日現在のB1リーグでのフリースロー成功率1位の座にいる、広島ドラゴンフライズの【ケリー・ブラックシアーJr】選手のFTRを算出してみましょう。

算出に必要な同選手のFTAとFGAの今シーズンの平均は以下の通りです。

  • FTA:5.7本
  • FGA:10.5本

これをそのまま、上記の計算式に当てはめてみましょう。

5.7本÷10.5本≒FTR:0.54

FTRはその選手のプレースタイルやポジションによる影響が大きいので、一概にどの程度以上が優秀か、ということは言いにくい指標になります。

観戦時の活用の仕方、楽しみ方

FTRの指標に基づいた観戦をしていくと、そのチームにおいて、どの選手がチームのオフェンスを引っ張っていっているかという点が見えてきやすいのが特徴です。

それは、フリースローというものが、基本的にはシュートの最中にディフェンス側の選手からファウルを受けた際に得られるものだからですね。よりアグレッシブにオフェンスをプレーしている証拠なのです。

この指標を元にした楽しみ方として、個人的な好みと併せて解説しましょう。

例えば、筆者自身は身体能力の高いアスレチック・ガードな選手(NBAだとRussell WestbrookやJa Morant)が好きなのですが、例えば選手のスタッツを眺めている時に…

筆者
筆者

ん?この選手、やけにFTR高いな…。結構アグレッシブに行くガードなのかな?

と、こんな形からその選手のプレーに注目して観戦することが出来ます。

また、FTRは選手個人だけではなく、チーム同士の比較で戦術の違いを考慮しながら観戦することが出来ます。

例えば、この記事を執筆している2024年12月7日現在、B1リーグの中地区の覇権争いを繰り広げている【アルバルク東京】と【三遠ネオフェニックス】が第13節に予定されているので参考にしてみましょう。

アルバルク東京のチームFTRは以下の通りです。

20.3本(チームの平均FTA)÷64.6本(チームの平均FGA)=FTR:0.31

対する三遠ネオフェニックスのチームFTRは以下の通りです。

23.0本(チームの平均FTA)÷68.2本(チームの平均FGA)=FTR:0.33

微々たる差ですが、三遠ネオフェニックスの方が、ややゴールに向かってアグレッシブに戦うスタイルのチームと言えますね。後者のチームの方が現在リーグでダントツTOPの得点数を誇っている裏付けにもなっています。

Pace(ペース)

Paceとは、読んで字の如く、1試合当たり、各チームがどれだけ速いテンポでプレーしているかを示す指標です。試合のテンポを客観的に評価することで、そのチームのスタイルや戦術を理解するのに役立ちます。

計算方法

Paceを計算するには、各チームの1試合当たりの総ポゼッション数(ボールを保持して攻撃している1回の時間)のデータが必要ですが、こちらの計算方法まで説明すると長くややこしくなるため割愛します。そっちはまたいつかの機会に…。

Pace=40×((チームの総ポゼッション数+そのチームが与えた総ポゼッション数)÷2×試合時間)

計算式の【40】が表しているのは、1試合の試合時間であり、FIBAルールで行われている多くのリーグの場合は40分なので40、NBAでは1試合の試合時間が48なので、その場合は【48】に変更されます。最後の【試合時間】は同点延長を考慮した場合の時間ですね。

観戦時の活用の仕方、楽しみ方

Paceはそのチームの特色によって変化が起こりやすい指標で、それぞれのチームで比較がしやすいものになります。

例えば、今、筆者自身の中にデータがある【群馬クレインサンダース】と【三遠ネオフェニックス】で比較してみましょう。各チームのPace計算に必要なデータはそれぞれ以下の通りです。

群馬クレインサンダース

  • 総ポゼッション数:70.3
  • 与えた総ポゼッション数:69.9
  • 試合時間:40分

三遠ネオフェニックス

  • 総ポゼッション数:75.5
  • 与えたポゼッション数:75.8
  • 試合時間:40.3分

このデータを基に、両チームのPaceを算出してみます。

群馬クレインサンダースのPace:70.1

三遠ネオフェニックスのPace:75.1

このように比較してみると、群馬クレインサンダースよりも三遠ネオフェニックスの方がペースの速い試合展開をする傾向にあるチームであると分かります。

このデータを念頭に置いた状態で観戦すると、特に接戦時や、どちらかのチームに流れが傾きそうな局面で緊張感を持った観戦が出来るようになります。

群馬ブースター
群馬ブースター

この時間大事だぞ!しっかりセットプレーで確実に得点重ねて、ディフェンス頑張ろう!

三遠ブースター
三遠ブースター

こっちに流れを持ってきたいな…。ガンガン攻めて走れ走れー!!

個人的な感想ですが、ペースの遅いチームはそれだけ得点数も少なくなりがちですが、それでも得点数が増えてくるようなチームには優秀な戦術を敷くHCと優秀なプレーメイカータイプの選手がいると思ってます。頭を使うチームの方が観てて楽しかったりしますね。

Rebound%(REB%:リバウンドパーセンテージ)

REB%とは、選手やチームが試合中にどれだけのリバウンド(以下、REB)を獲得したかをREBの全体数に対する割合で示した指標です。
単なる合計のREB数ではなく、試合全体でのREB機会の中でどれだけ貢献しているかを正確に把握することが出来る指標です。

計算方法

REB%は主に「チームREB%」と「個人REB%」の2種類に分けられ、それぞれ少し計算式が異なります。

チームREB%の計算方法

チームREB%=(チーム総REB÷(チームの総REB+相手チームの総REB))×100

個人REB%の計算方法

個人REB%=((その選手のREB数×チームの試合時間)÷(その選手の試合時間×(チームの総REB+相手チームの総REB)))×100

チームREB%に比べると、やや複雑になってきますね。

観戦時の活用の仕方、楽しみ方

REB%指標の面白いところは、単なるREB数だけでなく、オフェンスREB(以下、OREB)やディフェンスREB(以下、DREB)に分けて分析することも可能なところです(それぞれの計算方法はまた次の機会に…)。

バスケットボールをプレーヤーとして経験したことある人のほとんどは、この言葉を見聞きしたことがあるかもしれません。

リバウンドを制する者は試合を制す

©【スラムダンク】赤木剛憲
©スラムダンク3巻より

この言葉の示すところとして、OREBを高確率で獲れるチーム・選手は、それだけチームの攻撃を継続することに貢献していることになります。

また、DREBを高確率で獲れるチーム・選手は、それだけ相手の攻撃を中断する能力が高いことを示しています。

特にDREB%については、本場NBAではそのシーズンのDPOY(Defensive Player Of the Year:最優秀守備選手賞)の論点に掲げられることもあるほど重要な数値です。

そういう意味では、シーズンが終わってのオフシーズンの楽しみに関わる指標と言えますね。

昨シーズン、ウチのチームはREB弱かったから、REB%高い○○選手が来てくれて良かった~!

DREB%はウチの○○選手が今シーズン一番高い!ベストディフェンダー賞間違いないわ!

…まぁ、DPOYはNBAもBリーグもメディア投票だったはずなので、DREB%が高いから受賞するものでもないですけどね。Bリーグは選手やHCの投票も加わるので、数字よりも印象の要素が強そうです。

Point Per Possession(PPP:1ポゼッションあたりの得点)

PPPは1回のポゼッション(攻撃機会)あたりに獲得した平均得点を示す指標で、選手やチームの攻撃の効率を評価することの出来る指標です。

計算方法

「1回のポゼッション数あたりの平均得点」なので、Pace同様、ポゼッション数の計算が必要です。同じく長くなるので割愛します。

PPP=得点数÷ポゼッション数

こんな感じで非常にシンプルですね。

PPPは一般的に0.9をベースに、【1.0を超えると優秀、0.8を下回ると低い】と評価される指標です。

観戦時の活用の仕方、楽しみ方

PPPはその性質上、選手のオフェンス能力に直結する指標です。先に解説したFTRと併せて分析することで、よりその選手のオフェンス能力を評価することが出来ます。

特にPPPが重要とされる場面と選手としては、「クラッチタイム(試合終盤の接戦)での成績」や「シックスマン」についてでしょう。

滋賀ブースター
滋賀ブースター

オフェンスで優秀なのはやっぱり得点王のブロック・モータム選手でしょ!

HERO
HERO

いやいやいや、ウチの辻選手はPPP:1.37ありますから!モータム選手の1.15より高いですから!

みたいな、そんな議論が巻き起こせるようになると楽しいですね(笑)

まとめ

如何だったでしょうか?アドバンスドスタッツは単純なもの・複雑なものと色々ありますが、時代を超えた選手の比較が出来るようになるため、バスケ論議をより深めることの出来る指標です。

ホントに分かりやすいところでは、「田臥雄太選手と富樫勇樹選手と河村勇樹選手って、結局誰が一番優れたPGだったの?」という議論で活躍します。

ただ、マウントを取るための材料として使うと嫌われるので、それだけは気を付けるように(笑)

アドバンスドスタッツは他にもたくさんあるので、いずれ実例とともに紹介していきます。

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