8/5から開幕したFIBAアジア杯2025。日本の2戦目となったグループリーグの正念場である8/8のイラン戦をレビューしていきましょう。
尚、筆者のリアルタイム観戦は第1Q:残り35秒~第3Q:残り8分程度のみ。第2戦はABEMA TVで配信されているので、面倒な手続きが必要なTVerと違って見逃し配信も無料で見られるので、見逃した方は是非インストールの上、観戦してみてください。
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スタッツデータ
まずはスタッツを振り返ってみましょう。
Qスコア

基本スタッツ
日本 (FIBAランク:21位) | イラン (FIBAランク:28位) | |
70 | PT | 78 |
19/55 34.5% | FG | 31/66 47.0% |
9/24 37.5% | 2P | 24/46 52.2% |
10/31 32.3% | 3P | 7/20 35.0% |
22/25 88.0% | FT | 9/16 56.3% |
39 | REB | 32 |
9 | OREB | 6 |
30 | DREB | 26 |
14 | AST | 16 |
17 | TO | 8 |
4 | STL | 12 |
5 | BLK | 2 |
19 | F | 23 |
詳細スタッツ
日本 | シリア | |
7 | Points Off Turnover | 17 |
11 | Fast Break Points | 16 |
10 | 2nd Chance Points | 5 |
16 | Points in the Paint | 44 |
11 | Bench Points | 30 |



アドバンスドスタッツ
日本 | シリア | |
72.09 | ポゼッション数 | 74.16 |
試合のペース:73.13 | ||
97.09 | Offensive Rate | 105.18 |
105.18 | Defensive Rate | 97.09 |
53.0% | TS% | 53.4% |
43.6% | eFG% | 52.3% |
0.88 | POTE | 1.00 |
1.11 | 2nd Chance Efficacy | 0.83 |
54.9% | REB% | 45.1% |
25.7% | OREB% | 26.7% |
83.3% | DREB% | 74.3% |
73.7% | AST% | 51.6% |
23.6% | TO% | 10.8% |
0.97 | PPP | 1.05 |
0.45 | FTR | 0.29 |
戦評
ここからは個人的な戦評を語っていきます。
世代交代中のイラン代表、その中核となる新星とは?
イラン代表と言えば、イラン初のNBA選手となったビッグマンのハメッド・ハダディ選手やアジア有数のスコアリングPGであるベナム・ヤクチャリ選手の印象が強いですが、前回大会時のロスターと比べると、前回大会に出場した選手は4選手。コアメンバーが残っている日本と異なり、世代交代期を思わせるロスターになりました。
敢えてイランの選手から触れていくと、#6:モハメド・アミニ選手が上手かったですね。第2Q序盤の2ポゼッションでペイントアタックからのレイアップを決めましたが、NBA選手のカイリー・アービングを彷彿とさせるフィニッシュの柔らかさがありました。ゲームハイの24得点を決めています。

気になって調べたら、まだ20歳!フランスリーグに所属している選手で、2023年のW杯にも出場し、チームのベストスコアラー(PPG:13.2)として活躍していました。今後、イラン代表を牽引していく選手となるのは間違いないでしょう。
圧巻のパフォーマンスを見せた富永とホーキンソン
では、視点を日本に戻していくと、見方によって「8点差で敗北」の価値が変わってきそうです。
日本代表側のトピックスと言えば、試合を見ていた人なら満場一致で富永啓生選手でしょう。追い上げた第2Qではハンドリングからのステップバック3P。また、そのプレーを囮にしたドライブやアシストで、相手にタイムアウトを取らせるなど、短い時間ながらゲームを支配し、結果、チームハイの22得点。3Pは5/9(55.6%)と持ち味を発揮しました。
また、日本の大黒柱であるジョシュ・ホーキンソン選手もFT:12/12で失敗無しの20得点。リバウンドでも気を吐いて17REB(OREB:5、DREB:12)で、ファストブレイクにも積極的に参加して「これは日本の大黒柱」と言わしめる活躍でした。
活躍すべき選手が活躍した試合で、何故負けてしまったのか?スタッツから紐解いていくと敗因は割と明白です。
敗因①:ファウルトラブル
まず1点目がファウルトラブル。各選手のファウル数を見て行きましょう。
- ジェイコブス昌選手:3ファウル
- 馬場雄大選手:2ファウル
- 西田優大選手:4ファウル
- ジョシュ・ホーキンソン選手:1ファウル
- 富永啓生選手:5ファウル(退場)
- 吉井裕鷹選手:3ファウル
特に痛かったのが、富永選手のファウルアウト。他にもチームのスコアラーとなるべきジェイコブス選手・吉井選手のファウルが嵩んでしまったことや、PoAディフェンダーとして期待されていた西田選手も4ファウルで他の選手の負担になってしまいました。
ホーバスJAPANに限らず、歴代の日本代表の傾向として、スコアラーが不在になる時間帯に得点が停滞してしまうこと(まぁそりゃそうなんだけど…)。最終スタッツではイランの方がファウル数は多く、序盤はイランの方がファウルを吹かれることが多かったですが、日本側もそれにアジャストしていくべきでした。
敗因②:クラッチタイムで目立ったターンオーバー
2点目はTOトラブル。試合を通して「ここでもう1本獲れたら流れ来るぞ!」「ここ大事だぞ!」という場面でことごとくTOを犯してしまったこと。
テーブス海選手・富樫選手の2人のPGがそれぞれ3TO。ある意味「通常運転」だった馬場選手も3TO。そして、最も痛かったのがホーキンソン選手の6TOでした。
特に試合最終盤のポゼッションでホーキンソン選手→富樫選手のハンドオフのTOがかなりクラッチなTOになってしまいました。
敗因③:ホーキンソンの2P不調と得点効率の低下
ホーキンソン選手の6TO特に痛かったです。3つ目の敗因にも繋がりますが、ホーキンソン選手は2PFGが1/7(14.3%)とFTとは打って変わって大不調。
地味に難しい距離感とは言え、ローポストからのノーマークプルアップをエアボールしたり、試合終盤にボースハンドダンクを失敗するなど、今日はボールが手につかなかったのでしょうか?
%FGの部分を振り返ってみましょう。


ホーバスバスケにおけるFGバランスの理想と現実
これは筆者の個人的な印象でしかないですが、ホーバスHCにとっての%FGの理想は、2P:3Pが【5:5もしくは6:4】だと思っています。
【3Pシュート】にフォーカスされがちなホーバスバスケですが、その実、重要なのはペイントアタック、2PFGが基点になっての3Pシュート。そういう意味では、本試合は2PFGが少なすぎました。
反面、3Pのシチュエーションは、良い感じで作れており、特段タフな状況は少なかったと思ったので、「3Pが下振れた試合」と捉えることが出来ます(富永選手のシュートに限っては、「アレもその選手のタイミング」と考えると決してタフではありません)。
その状態でホーキンソン選手の2PFGMがあと3~4本決まっていれば、また違った展開になっていたでしょう。それこそ4本決めていたら、単純計算で78-78の同点でしたしね。
他の選手にフォーカスを当てると、強化試合ではフィニッシャーとして活躍していたジェイコブス選手のカッティングプレーがあまり見られませんでした。
吉井選手は序盤に立て続けに3Pを失敗していたことがHCや他選手の心象に良くなかったのか、以後、コートインしてもボールタッチがほとんどありませんでした。本来、3Pだけでなく、しっかりアタックできる選手なんですが…。
「8点差の敗北」はポジティブかネガティブか?
【見方によって「8点差で敗北」の価値が変わる】と述べましたが、「飛車・角・金・銀である八村塁選手・河村勇樹選手・渡邊雄太選手・比江島慎選手を欠くチーム編成で対イラン8点差」「3Pシュートが下振れてなかったら勝てた」という前提ならポジティブに見れるでしょう。
逆に、「この8点差はTOやシュート効率の影響」と見るならネガティブな視点になりますが、個人的には後者の考え方です。「善戦した」と言うよりも「勝ち試合を自分たちで逃した」と言う表現の方がしっくりくる試合でした。
次戦はグループリーグ最終戦のグアム戦。FIBAランクに差はありますが、予選Windowのアウェイ戦では、あわや敗北しかけたので、決して油断できません。フィジカルに戦ってくるチームなので、ファウルトラブルについては修正が必須になってくるでしょう。
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