8/5から開幕したFIBAアジア杯2025。準々決勝進出決定戦である8/13のレバノン戦をレビューしていきましょう。
今回は第3Q残り1分くらいからのリアルタイム観戦となりました。この試合もABEMA TVで配信されているので、面倒な手続きが必要なTVerと違って見逃し配信も無料で見られるので、見逃した方は是非インストールの上、観戦してみてください。
ABEMAの公式サイトはこちらから
スタッツデータ
まずはスタッツを振り返ってみましょう。
Qスコア

基本スタッツ
日本 (FIBAランク:21位) | レバノン (FIBAランク:29位) | |
73 | PT | 97 |
25/60 41.7% | FG | 41/73 56.2% |
18/33 54.6% | 2P | 36/54 66.7% |
7/27 25.9% | 3P | 5/19 26.3% |
16/23 69.6% | FT | 10/14 71.4% |
29 | REB | 43 |
7 | OREB | 11 |
22 | DREB | 32 |
19 | AST | 28 |
15 | TO | 10 |
5 | STL | 14 |
3 | BLK | 4 |
15 | F | 21 |
詳細スタッツ
日本 | レバノン | |
8 | Points Off Turnover | 22 |
13 | Fast Break Points | 24 |
1 | 2nd Chance Points | 9 |
36 | Points in the Paint | 60 |
24 | Bench Points | 23 |



アドバンスドスタッツ
日本 | レバノン | |
77.48 | ポゼッション数 | 77.19 |
試合のペース:77.33 | ||
94.22 | Offensive Rate | 125.67 |
125.67 | Defensive Rate | 94.22 |
52.1% | TS% | 61.3% |
47.5% | eFG% | 59.6% |
0.80 | POTE | 1.47 |
0.14 | 2nd Chance Efficacy | 0.82 |
40.3% | REB% | 59.7% |
17.9% | OREB% | 33.3% |
66.7% | DREB% | 82.1% |
76.0% | AST% | 68.3% |
19.4% | TO% | 13.0% |
0.94 | PPP | 1.26 |
0.38 | FTR | 0.19 |
戦評
ここからは個人的な戦評を語っていきます。
バランス抜群のスコアリングを誇るレバノン代表
まず、対戦相手のレバノン、試合前にXでポストした内容にもなりますが、グループリーグでの各試合、2ケタ得点を記録した選手が4~5人いるというスコアリングバランスが非常に高いチームという印象がありました。
SNSやYahoo!コメント界隈では、
- エースのエルハジが欠場だからイケそう。
- 負傷している選手が多いらしいからイケそう。
- コーチ陣と選手が衝突しているらしい。
- オーストラリアと反対の山だから寧ろ2位通過で良かった。
みたいなコメントが多く見受けられました。ただ、個人的には前述したような要素があるチームだったので、エースが欠場と言えども全く油断ならないチームだと思っていました。
レバノンに展開された「日本がやりたいバスケ」
そんなレバノンチームですが、これまでと同様に5人の選手が2ケタ得点を記録し、他に9得点した選手が1人と、相変わらずバランスの良いスタッツを記録。
これらのスコアを記録した選手たちですが、#5:Amir Saoud選手を除いた5人が2PFG%が50%を超え、3選手が90~100%という驚異的なスコアリングを見せました。
- #7 Karim Zeinoun:9/10(90.0%)
- #11 Dedric Lawson:10/11(90.9%)
- #23 Youssef Khayat:6/6(100%)
これらの選手を引っ張っていたのが#10:Ali Mansour選手で得点こそ5得点でしたが、15ASTを記録。185cmのアジアの中ではビッグガードにあたるサイズですが、サークルアンダーなどでオフェンスコントロールをしていたのが印象的でした。
レバノンのスタッツを見ると、2PFG%:66.7%、%FG2P:87.8%とあるため、体格差でインサイドを支配された印象を抱く人もいると思いますが、その実、この選手を起点にオフェンスを崩されたり、ファストブレイクでイージープレーを演出するなど、寧ろ日本がやりたいバスケをレバノンが展開していました。
日本代表に目立ったディフェンスのエラー
その観点で日本側に視点を移すと、グループリーグではあまり感じなかったディフェンスのエラーが多かったように思います。ヘルプのタイミングが遅くなって、「ヘルプのヘルプ」のタイミングも遅くなっているのが目に付きました。
また、ファストブレイクを被った時にディフェンスの優先順位を間違えたりで、ワイドオープンなシュートを与えてしまっていましたね。
富永啓生が徹底マークで封じられた試合
オフェンス面では、富永啓生選手が3Pシュートをレバノンにかなり警戒されていましたね。Abemaの実況・解説でも度々触れていましたが、ディフェンダーがボールをほとんど見ず、オフボールからフェイスガードを展開していたため、富永選手はボールタッチすらままならない苦しい状況に。
途中、相手のDREBのエラーからボールを保持したり、他選手のTOになりかけたボールを拾ったりでボールを保持するタイミングはいくつかありました。
ただ、これまでの試合なら多少強引にでも3Pをクリエイトして決め切ってきていましたが、この試合ではそれがほとんどなく、3PFG:0/3に終わりました。ドライブからの2Pも試みましたが、不運なミスもありつつも1/6(16.7%)と全くスコアリング出来ず。
富永選手は以前のインタビューで「ファーストシュート(1本目の3Pシュート)を大事にしている」というコメントを残していました。出場機会が限られていたGリーグ:インディアナ・マッドアンツ所属時に、プレータイムを勝ち取るために意識していた事柄として挙げていました。
この試合、ファーストシュートを富永選手は落としました。これは試合を見た、あくまで個人的な印象ですが、ボールを保持していたタイミングが、オフェンスがゴタゴタしている時が多かったため、自身もチームも落ち着いてコントロールしようという意識が強く働き過ぎたのかもしれません。
シューターとしては、外してもシュートを打ち続けてタッチを高めていくのも必要ですが、トーナメントのような試合形式を考えると、プレーの選択としては決して間違いではないでしょう。富永選手にとって、とても難しい試合だったでしょう。
吉井裕鷹が前半16得点で奮闘
他の選手を見ると、吉井裕鷹選手が前半だけで16得点。キャッチ&シュートの3P、ドライブやカッティングからの得点と多岐に渡り、劣勢なチームをしっかり繋ぎました。
ただ、後半は0得点。シュートも第3Q・第4Qにそれぞれ3PAを1本ずつ放ったのみ。
後半は吉井選手に限らず、各選手に対するディフェンスの強度が上がり、オープンなプレーヤーを作り出すことが出来なかったことも要因でしょう。得点こそ試合を通じて最も得点が多くなりましたが、全体的にタフショットが多くなってしまいました。
この試合を通して思ったことは、もちろん、富永選手の得点が伸び悩んだことや、馬場雄大選手やジョシュ・ホーキンソン選手の疲労なども影響していたのも敗因の1つだとは思います。
ただ、最も大きな敗因はコーチ陣のアジャストメント力が低かったことではないでしょうか?
最大の敗因はコーチ陣のアジャスト不足
最近のトピックスとして中々センシティブな話題になりそうなので、先に前提を明記しておくと、【八村塁選手とのゴタゴタに絡めてトム・ホーバスHCの解任】には反対です。この意見に関してこの記事で述べると話が逸れるので触れませんが、反対の意図について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
レバノン側に立つと、まず、富永選手をオフェンスで孤立させるため、日本オフェンスにスペースを与えるデメリットを持っても、オフボールでフェイスガードをさせた。加えて、ペイントタッチしてきた時のディフェンス・ケアもチーム内でかなり浸透していました。
試合を通じて、ディフェンスの裏を突かれたカッティングプレーでの失点が多かったですが、ハンドラーへのディフェンス強度を上げて、簡単にパスを出させないこと、パスを出されてもイージープレーを許さなかったことなど、後半に向けて修正を加えていました。
オフェンスでもボールムーブを駆使して日本ディフェンスのエラーを誘い、そのボールを確実に決めていた印象があります。
反面、日本側はと言うと、レバノン側の戦術にアジャスト出来ていたとは到底思えませんでした。
オフェンスでは分かりやすく、このチームの最高火力である富永選手を活かせるようなプレーの修正が出来ていませんでしたし、強度の上がった相手ディフェンスに対応できず、TOからファストブレイクやファウルを数多く許していました。TO:15本・TO%:19.4%・Points Off Turnover:22失点という数字が物語っています。
ディフェンスにおいても、前述したようにエラーが多かったです。ヘルプのタイミングの遅さが顕著で、それが「ヘルプのヘルプ」のタイミングにも影響を及ぼし、結果、ワイドオープンなシュートを与えてしまっていました。
タイムアウトのタイミングにも課題
タイムアウトのタイミングが勝敗の決した第4Qの最終盤に2度取っていました(残り2:11と0:33の時点)が、高校生の部活の大会のような、「残りの時間、どう【日本のバスケ】を表現するか?」みたいなものは必要ないので、もう少し早い段階でタイムアウトを取って対策を伝授しても良いのではないか?と思います。
これでは、よく「ホーバス解任派」に言われる、「戦術構築能力が低い」「戦術の修正をしたくても出来ない」と捉えられても仕方ありません。
個人的にはホーバスHCはストラテジスト(戦術家)ではなく、モチベーター(士気向上役)よりのHCだと思っていますし、世界に対して負け癖のある日本にとっては必要なHCだとも思っています。問題であり、この試合の責任が重いのは、HCも含めたコーチ陣全体にあると思います。
これからはW杯2027に向けた予選Windowが始まります。直近、連敗している韓国や依然トップレベルの実力を持つ中国、力を付けてきている台湾を相手取ることになっているため、今後も選手・コーチともに成長が必要な試合になったな、と感じました。
ABEMAの公式サイトはこちらから
コメント