屈辱的な敗戦を喫したアジア杯から約3ヶ月が経って、いよいよ2028LA五輪に繋がる日本代表のロードが始まった【FIBA W杯2027】のアジア1次予選。Window1は2戦とも台湾ということで、試合レビューをしていきます。
11/28の試合データ
まずはスタッツを振り返ってみましょう。
基本スタッツ
| 日本 (FIBAランク:22位) | 台湾 (FIBAランク:67位) | |
| 90 | PT | 64 |
| 31/76 40.8% | FG | 21/56 37.5% |
| 20/37 54.1% | 2P | 15/30 50.0% |
| 11/39 28.2% | 3P | 6/26 23.1% |
| 17/18 94.4% | FT | 16/21 76.2% |
| 49 | REB | 33 |
| 17 | OREB | 5 |
| 32 | DREB | 28 |
| 28 | AST | 15 |
| 11 | TOV | 19 |
| 10 | STL | 5 |
| 4 | BLK | 5 |
| 19 | F | 18 |
詳細スタッツ
| 日本 (FIBAランク:22位) | 台湾 (FIBAランク:67位) | |
| 64.5% | %FGM2P | 71.4% |
| 35.5% | %FGM3P | 28.6% |
| 48.7% | %FGA2P | 53.6% |
| 51.3% | %FGA3P | 46.4% |
| 44.4% | %PT2P | 46.9% |
| 36.7% | %PT3P | 28.1% |
| 18.9% | %PTFT | 25.0% |
| 25 | Points Off Turnover | 7 |
| 20 | Fast Break Points | 9 |
| 14 | 2nd Chance Points | 6 |
| 30 | Points in the Paint | 30 |
| 32 | Bench Points | 8 |
アドバンスドスタッツ
| 日本 (FIBAランク:22位) | 台湾 (FIBAランク:67位) | |
| 76.01 | ポゼッション数 | 78.34 |
| 試合のペース:77.17 | ||
| 118.41 | Offensive Rate | 81.70 |
| 81.70 | Defensive Rate | 118.41 |
| 53.6% | TS% | 49.0% |
| 48.0% | eFG% | 42.9% |
| 1.32 | POTE | 0.69 |
| 0.82 | 2nd Chance Efficacy | 1.20 |
| 59.8% | REB% | 40.2% |
| 37.8% | OREB% | 13.5% |
| 86.5% | DREB% | 62.2% |
| 90.3% | AST% | 71.4% |
| 14.5% | TOV% | 24.3% |
| 1.18 | PPP | 0.82 |
| 0.24 | FTR | 0.38 |
Shoot Summary
| 日本 (FIBAランク:22位) | 台湾 (FIBAランク:67位) | |
| 3/11 27.3% | Self-Shootmake | 8/16 50.0% |
| 4/6 66.7% | MID-Jumper | 3/8 37.5% |
| 3/5 60.0% | Short-Jumper | 4/6 66.7% |
| 0/0 – | Push | 1/1 100.0% |
| 3/7 42.9% | Floater | 1/5 20.0% |
| 7/12 58.3% | Lay-Up | 4/8 50.0% |
| 2 | Dunk | 2 |
| 1 | Tip-In | 0 |
| 5/20 25.0% | Catch&Shoot | 3/16 18.8% |
| 2/6 33.3% | Moving | 1/2 50.0% |
| 4/14 28.6% | Pull-Up | 2/7 28.6% |
| 3/8 37.5% | Wide-Open | 0/3 0.0% |
戦評
ここからは個人的な戦評を語っていきます。
スターターの貢献度が凄まじかった日本代表
当初、筆者のスターターの予想は【斎藤・馬場・吉井・渡邊雄太・ジョシュ】の5人でしたが、吉井裕鷹選手ではなく西田優大選手がスターターに。敢えて意図を読み解くと、DF面では吉井選手と高いレベルで大差ないものの、やはり2ndハンドラーとして西田選手の方が順位が上ということでの起用だったのでしょうか?
当サイトでのスタッツ情報の掲載では、優位に立っているデータを赤字で表記していますが、この試合、日本代表はBLK・2.C.E・FTR以外のデータ全て優位に立ちました。前半ハーフで45-22の大差をつけた背景と言えるでしょう。
特にスターター陣の貢献度は凄まじく、チームトップの20得点を決めた渡邊雄太選手は前半だけで16得点。他にも5REB・5AST・1STL・1BLK・0TOVとオールラウンドに活躍。
ジョシュ・ホーキンソン選手もチームトップのETF:27・+/-:+37と相変わらずの貢献度で、14Pts・11REB・8ASTとあわやトリプルダブル級の活躍でした。
注目された齋藤拓実選手は最序盤こそ、相手のDFに煽られてしまったものの、以後は基本的に落ち着いたプレーを見せ、アジア杯で日本に足りないと言われていた、「縦へのクリエイト」がとても良く機能していました。
ただ、この試合のMOM(Man Of the Match;この試合で最も活躍した選手)は馬場雄大選手でしょう。
FGA:9本と決してハイボリュームではなかったものの、カッティングからのフィニッシュ力は日本のボールムーブを引き出してくれましたし(チームAST%:90.3%)、持ち前のPoA-DFで相手エースの#9:レイ・リン選手を僅か3得点に抑えました。
ボールムーブで優位に。チームAST%は驚異の90.3%。
チームスタイルによってAST%は変わるので、一概に「高い水準だから良い」というわけではありませんが、台湾に的を絞らせず、オンコートした選手が満遍なく得点を決めていました。
得点の内訳を見ていくと、富樫勇樹選手・渡邉飛勇選手の2選手のみ無得点だっただけで、他のロスターメンバー10人が得点を挙げ、選手それぞれのチーム全体からみた%FGAの比率は、最も高水準だった渡邊雄太選手が19.7%、次いでホーキンソン選手と富永選手がそれぞれ15.7%と、バランスの取れたOFを展開しました。
対する台湾はAST%71.4%とまずまずなものの、Self-Shootmakeが8/16(50.0%)と高効率ながら、全体のeFG%が42.9%と低調だったことが、スコアに差が発生したと考えられます。
勝敗を分けたのはTOV
この試合のTOV絡みのデータをピックアップしてみましょう。
- TOV(TOV%)
- 日本:11本(14.5%)
- 台湾:19本(24.3%)
- Points Off Tournover(P.O.T.E)
- 日本:25得点(1.32)
- 台湾:7得点(0.69)
- Fast Break Points
- 日本:20得点
- 台湾:9得点
P.O.Tについては日本が台湾に3.6倍の大差をつけました。TOV1本当たりのP.O.Tの効率を示す、P.O.T.Eでも2倍近い差を叩き出しました。
台湾のインバウンドに対して積極的にゾーンプレスや上からハンドラーへのダブルチームを仕掛けるなど、ディフェンスのインテンシティを常に保った結果だったでしょう。
中盤、馬場選手が相手のパスを防いで、富永選手がOF方向にチップし、再び馬場選手がルーズボールダイブ、シメはホーキンソン選手のポスタライズダンクは、見ている人がみんな唸っていたはず。筆者は観戦時、真夜中だったのに声が出そうになりました(笑)
REBも49-33で圧倒、だがしかし・・・?
本数の違いの他、REB%(59.8%-40.2%)からもわかるように、この試合、日本代表は終始REBを支配していたと言えるでしょう。特にOREBの意識はアジア杯から継続して高く、得点同様、多くの選手がOREBを獲得しました(OREBスタッツを記録したのは12人中8人)。
ただ、OREBから繋がる2nd Chance Ptsを阻まれ、総得点では14得点獲れているものの、効率面を見ると2nd.C.Eは1.00を下回る0.82。
2nd Chance Ptsに繋がりやすい、Short-Jumperはともかく、Catch&Shoot3Pの確率が上がらなかったのが要因とも言えるでしょう。
12/1の試合データ
第1戦目を終えて、お互いのアジャスト能力が試される連戦の第2戦。スタッツから振り返っていきましょう。
なお、この試合はAbemaTVでも視聴可能です。見逃した方は是非、アカウントを作成して実際の試合も振り返ってみてください。
ABEMAの公式サイトはこちらから基本スタッツ
| 日本 (FIBAランク:22位) | 台湾 (FIBAランク:67位) | |
| 80 | PT | 73 |
| 27/65 41.5% | FG | 22/69 31.9% |
| 18/33 54.5% | 2P | 14/42 33.3% |
| 9/32 28.1% | 3P | 8/27 29.6% |
| 17/24 70.8% | FT | 21/31 67.7% |
| 45 | REB | 43 |
| 11 | OREB | 16 |
| 34 | DREB | 27 |
| 13 | AST | 16 |
| 12 | TOV | 12 |
| 5 | STL | 6 |
| 8 | BLK | 2 |
| 23 | F | 23 |
詳細スタッツ
| 日本 (FIBAランク:22位) | 台湾 (FIBAランク:67位) | |
| 66.7% | %FGM2P | 63.6% |
| 33.3% | %FGM3P | 36.4% |
| 50.8% | %FGA2P | 60.9% |
| 49.2% | %FGA3P | 39.1% |
| 45.0% | %PT2P | 38.4% |
| 33.8% | %PT3P | 32.9% |
| 21.3% | %PTFT | 28.8% |
| 20 | Points Off Turnover | 20 |
| 10 | Fast Break Points | 14 |
| 13 | 2nd Chance Points | 11 |
| 30 | Points in the Paint | 28 |
| 21 | Bench Points | 10 |
アドバンスドスタッツ
| 日本 (FIBAランク:22位) | 台湾 (FIBAランク:67位) | |
| 74.83 | ポゼッション数 | 77.31 |
| 試合のペース:76.07 | ||
| 106.91 | Offensive Rate | 94.43 |
| 94.43 | Defensive Rate | 106.91 |
| 52.9% | TS% | 44.2% |
| 48.5% | eFG% | 37.7% |
| 1.67 | POTE | 1.67 |
| 1.18 | 2nd Chance Efficacy | 0.69 |
| 51.1% | REB% | 48.9% |
| 28.9% | OREB% | 32.0% |
| 68.0% | DREB% | 71.1% |
| 48.1% | AST% | 72.7% |
| 16.0% | TOV% | 15.5% |
| 1.07 | PPP | 0.94 |
| 0.37 | FTR | 0.45 |
Shoot Summary
| 日本 (FIBAランク:22位) | 台湾 (FIBAランク:67位) | |
| 6/13 46.2% | Self-Shootmake | 3/17 17.6% |
| 3/8 37.5% | MID-Jumper | 0/9 0.0% |
| 1/2 50.0% | Short-Jumper | 2/4 50.0% |
| 1/1 100.0% | Push | 1/3 33.3% |
| 4/13 30.8% | Floater | 4/7 57.1% |
| 8/9 88.9% | Lay-Up | 4/10 40.0% |
| 1 | Dunk | 3 |
| 1 | Tip-In | 0 |
| 3/15 20.0% | Catch&Shoot | 4/16 25.0% |
| 1/3 33.3% | Moving | 1/4 25.0% |
| 4/15 26.7% | Pull-Up | 3/8 37.5% |
| 2/6 33.3% | Wide-Open | 0/2 0.0% |
戦評
両チームとも23本のファウルで流れを掴みにくい試合展開に
Abemaの実況・解説でも言及していましたが、この試合、とにかくレフェリーの笛が軽く、頻繁にファウルコールで試合が止まり、日本・台湾どちらのチームにとってもリズムを作りにくい難しい試合展開になりました。
その結果、台湾は3選手(レイ・チェン選手、ブランドン・ギルベック選手、ジャック・ツェン選手)が、日本は1選手(吉井裕鷹選手)の計4選手が最終的にファウルアウトする事態に。
また、この影響で両チームともFTAが非常に多くなり、日本:24本、台湾:31本の計:55本ものFTシチュエーションになりました。中々これだけのAttempt総数も見ないですよね。
台湾に至っては、データ間違いが無ければ、第4Qの総得点:16得点の内、10点がFTMによるものでした。
こういった試合は批判されがちですが、ハイライトなどでよくよくよく見返してみると、レフェリーが笛を吹く根拠となる(判断の深度はあれど、言いくるめられるくらいには)プレーだったりするので、興行を主目的とした国内リーグとは異なり、世界大会に繋がる国際試合なので、「こういうこともある」と割り切るしかありません。
比較的アジャストした日本代表のDF能力
このようなファウルがたくさん吹かれる試合において、渡邊雄太選手・馬場選手・西田選手・原修太選手といったハードディフェンダーはDefensiveファウルを1~2本に抑え、レフェリーの笛にアジャストしていたと言えるでしょう(西田選手の3ファウルの内、1本はインバウンドパス妨害によるテクニカルファウル)。
渡邊雄太選手に至っては、ゲームハイの4BLK。他にもDREB:6本を含む9REBを記録しました。個人的に、国際試合ではX上でTeir表を作って発信していますが、Wide Open 3Pをしっかり決め切れていたら、第1戦に続いてTier Sのランクにつけていましたね。
また、馬場選手・原選手はこの試合でもDFハイライトを何度か演出しており、第1戦に高確率だった相手のSelf-Shootmakeによるシュートを3/17にシャットアウトする貢献を見せたと思います。
特に台湾のエース格である#0:ベンソン・リン選手個人のSelf-Shootmakeを0/6と完全に封じ込め、チェン選手同様にFGを抑え込みました。素晴らしいDFだったと思います。
OREBの改善を図ってきた台湾、被2nd Chanceを防いだ日本
台湾は第1戦ではOREBが僅か5本でOREB%も13.5%と低調でしたが、第2戦ではOREB:16本(OREB%:32.0%)と改善してきました。
ただ、そこは日本代表陣のDF。第1戦は台湾の2nd C.Eが1.20と高効率でしたが、第2戦では0.69に抑え、こちらでも日本代表は対応してきました。
選手個人の2nd Chance シチュエーションまでは見ていませんが、台湾のギルベック選手が6本、ツェン選手が3本のOREBを獲得する中、それらの選手のShort-Jumper Attemptをそれぞれ1本・2本に抑え、成功数もギルベック選手の1本のみに抑えたことが起因しているでしょうか?
※第1戦もギルベック・ツェン両選手のAttemptが2本・1本だったが、その試合はギルベック選手がShort -Jumper:2/2。
ただ、日本はDREB%が68.0%と、DREBをそこそこ確保出来ていたものの、そこからファストブレイクに繋がりにくく、第1戦では20得点あったF.B.Ptsがこの試合では半減し10得点。今一つ流れに乗れなかった要因の1つでしょう。
Window1の所感・総括
兎にも角にも、2連勝で勝ち切れたことは素直に喜ぶべき結果でしょう。直前のパワーランキングではグループ内で最下位だったわけですし。
ただ、もちろん課題はあって、最も大きく、かつ、分かりやすいのがシュート精度の部分。
2試合通してのFGが58/141で、確率にして41.1%。大きな武器にしていたはずの3Pも2戦とも30%を下回る結果になりました。
特にWide Open 3Pが第1戦:3/8(37.5%)、第2戦:2/6(33.3%)と低調も低調で、2戦合計で5/14、確率にして35.7%でした。
DFの強度が強くなる国際大会において、中々Wide-Openにシュートを打てることはほとんどありません。そんな中で、しっかり相手DFを崩して全体の3PFGAの2割前後をWide-Openに打てているわけですから、その辺はしっかり決め切って欲しいかなと思います。
と言うのも、今後戦う中国はフィジカルと高さにモノを言わせて2PやFTを稼いできますし、韓国はフレキシブルなデザインOFで3Pをクリエイトし、それを高確率で決めてくる強さを持っています。台湾戦ほどDFが機能しないことも十分に考えられるため、シーズン中の大変な時期ではあるものの、各々が修正をしてもらいたいところ。
Window2は翌年2026年の2月26日に中国、3月1日に韓国とのホーム2連戦。本Windowでよくわかりますが、2次予選へ成績が引き継がれることもあって、このホームの2試合はかなり重要。全力で応援していきましょう!


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