徹底分析!数字で見る宇都宮ブレックスの2024-25シーズン

数字で見るシリーズ

5/4にB1リーグレギュラーシーズンの全日程が終了したので、B1League 2024-25 Champion Ship(以下、CS)出場を決めた各チームをスタッツを中心に深掘りしようと思います。

第2弾は東地区1位の宇都宮ブレックスです。

勝敗状況

シーズン全体4812
HOME235
AWAY237

最長連勝数が12連勝(10/13滋賀~11/10@北海道)と、他地区1位の三遠:22連勝、琉球:16連勝の記録に比べると少なく感じますが、連敗が少なく、かつ5連勝以上を5回記録するという、ベテランチームらしい安定した勝率を誇っているチームです。

地区別の勝敗状況

シーズン全体4812
東地区235
中地区115
西地区142

所属地区の東地区では地区優勝が決まってからCS出場枠を確保せんと必死だった千葉や群馬相手にシーズン後半で3敗していますが、地区優勝以前の期間では20勝2敗と、開幕節に千葉に2連敗した以外は一度も東地区チームに負けていません。

反面、分かりやすく勝率が落ち込んでいるのが中地区。同地区には三遠を始めとしたA東京・三河・名古屋DDと現在の日本代表レベルの選手を複数人擁するチームが多いことから、案外、タレント負けすることも珍しくないのかもしれません。

CS出場チーム別戦績

合計108
千葉ジェッツ13
群馬クレインサンダーズ22
三遠ネオフェニックス11
アルバルク東京11
シーホース三河20
琉球ゴールデンキングス11
島根スサノオマジック20

CS出場チーム別の勝敗を見ると、勝率は.556。勝率で言えば三遠に次ぐ数字です。
地区優勝の決まったシーズン後半の千葉・群馬に対する3敗分は正直ノーカウントにしても良いような気がしますが、基本的には星を分け合う結果に。

勝敗の状況を振り返ると、三遠とは○●、琉球とも○●と2連戦節の2戦目でいずれも敗戦しています。ベテランチームですが、意外とアジャストされたら弱いのかもしれません。

スタッツ情報

宇都宮というチームを語る上で避けて通れないのは3Pシュート。1試合当たりの全てのFG試投数の内、何割が3Pシュートを占めているかという指標【%FGA3P】は52.4%と、リーグダントツのNo.1。
2位は名古屋ダイアモンドドルフィンズの46.3%なので、リーグで唯一、1試合のFG試投数の半分以上を3Pシュートが占めているチームです。

このチームを牽引しているのは2年連続のMVP受賞も視野に入るDJ・ニュービル選手と、こちらも2年連続のベスト3P%賞内定となった比江島慎選手の2名。

比江島選手と言えば、相手ディフェンスを惑わす【比江島ステップ】がシグネチャームーブとして有名ですが、昨シーズンまでは2PFGAの方が多かったですが、今シーズンは3PFGAの方が多くなり、確率もベスト3P%賞を受賞した昨シーズンをさらに上回る44.4%。今年35歳になる大ベテランですが、まだキャリアハイを更新する勢いです。

MVP候補のニュービル選手は更に凄まじく、以下のようなオールラウンド性が際立ちます。

  • PT:17.2点(リーグ8位)
  • REB:5.6本(リーグ64位、PGではリーグ1位)
  • AST:6.1本(リーグ2位)
  • FG%:46.9%、3P%:38.2%、FT%:72.6%

リーグには珍しい高身長外国人PGであることも影響していると思いますが、REBがPGとしてはリーグ1位であることは特筆すべきでしょう。PGにリバウンド力があるということは、DREBを確保してからそのままファストブレイクに繋げることが出来る強みになりますからね。

得点面

そんな強力なバックコートデュオが引っ張る宇都宮ブレックスの得点面を深掘っていきましょう。

勝戦時と敗戦時の得点比較

勝戦時にはQ当たり21.51得点と、ベテランチームらしい安定したゲームメイク能力を感じさせます。

敗戦時の方が第3Qの得点が高くなっているのが特徴的ですね。前半重たい展開で、一見負けゲームになっても、第3Qで巻き返そうとする自力の強さが伺えます。

勝戦時の得失点

勝戦時の失点状況を見ると、どのQにおいても20失点を下回っているのが素晴らしいですね。特に第2Q以降は18失点すらも下回っているので、得点面もそうですが、ディフェンスの良さが光ります。

敗戦時の得失点

敗戦時での得失点差については、第2Qで巻き返しがありますが、後半にその勢いを引き継ぐことが苦手だという評価が出来ます。

また、更にもう1歩踏み込むと、今シーズンの敗戦が12試合の内8試合がCS出場チームにもたらされたものになります。CSのレギュレーション上(外部リンク)、記事作成時点ではまだ対戦相手は決まっていませんが、ワイルドカード2チームのいずれかとなるのは確定しています。となると、シーホース三河もしくは群馬クレインサンダーズのどちらかになります。両チームのQ別の得失点を見ておきたいですね(後日投稿予定)。

オフェンス面

次に、得点に直結するオフェンスに関連するデータを基本スタッツから見て行きましょう。

FG

勝戦時と敗戦時の比較において、敗戦時にアテンプトが僅かに少なくなりますが、統計上、全く差が無いと言っても過言では無い数値にまとまりました。従って、シュートの確率が勝敗に直結すると言えそうです。

意外だったのが、勝戦時の得点期待値としては3P(期待値:1.10得点)よりも2Pの方が高いこと(期待値:1.22得点)でした。
意外に感じた理由としては%FGA3Pが前述したように50%を超えるチームだったので、てっきり得点期待値も3Pの方が高くなると思っていたからです。3Pの得点期待値:1.10得点はもちろん脅威ですが、相手ディフェンスがそちらに気を取られ過ぎていると、2Pを高確率で射抜かれるという感じでしょうか?

AST・TO

まず着目するのは、勝戦時と敗戦時の自チームのASTとTOの項目。勝戦時はAST:21.33本・TO:10.52本、敗戦時はAST:17.33本・TO:12.67本と、記録するASTの内2~3本がTOとなるかどうかというところが勝敗を分ける1つのキーポイントになるかもしれません。また、勝戦時にはAST/TOが2.03と、とても正確性の高いことも特筆すべき点でしょう。

前述のFG面と組み合わせて考えると、敗戦時には3P%が36.8%→31.1%と5.7%も低下することも影響を及ぼしていそうです。宇都宮の基本戦術として、ニュービル選手や比江島選手のペイントアタックから、ディフェンスが収縮したところに3Pシューターへキックアウトパスという、シンプルかつ強力な戦術を敷いてきますが、フィニッシャーである3Pシューターが決め切れないと負けてしまう。という弱点がありそうです。

これらの情報から、相手チームはパサーとなるハンドラーへディフェンスのプレッシャーをかけるのか、はたまた、フィニッシャーとなる3Pシューターへクローズアウトする方に意識を向けるのか。チームとしてのディフェンスルールをどのように設けるのか重要なポイントになりそうですね。

OREB・2nd Chance PTs

OREBの数の差については、自チームのシュートが外れることで発生するもの。そもそも勝戦時に高確率でシュートを決めているので、勝戦時にOREBが少ない・敗戦時に多いのはある意味納得です。

また、僅かな差ではありますが、勝戦時の方が敗戦時に比べて、OREBからの2nd Chanceを上手く利用していることが分かります。

計算式:2nd Chance PTs/OREB

  • 勝戦時:11.71/10.38=1.13
  • 敗戦時:12.25/12.00=1.02

Points Off Turnover(POT)

POTEは1TOあたりの得点期待値を表した指標です。勝戦時・敗戦時と比較してそこまで効率に差がありませんが、POT自体は約6点の差があります。POTの母数となる相手のターンオーバーを如何にして誘発させられるか、ディフェンス面の成績による影響が強い部分になってきますね。

得点構成

得点の構成は2P:43%、3P:43%、FT:13~14%と美しささえ感じるほど勝戦時と敗戦時の差がありません。良く言えば、常に自分たちのバスケに専念している、悪く言えば、専念し過ぎて確率が悪くなった時にアジャストが苦手という印象です。

ディフェンス面

次に、宇都宮のディフェンス面について見て行きましょう。

相手チームのFG

興味深いのは2PFG。基本的に、負ける時には相手チームのFGA・FGMいずれも多くなっていますが、2PFGAのみ、自チームの勝戦時と比較して2.63本少ないです。

確率を見ても、勝つ時は抑え、負ける時は確率良く決められていますが、3PFG%が2.7%の違いに対し、2PFG%は8.2%も違います。

2PFGのシチュエーション

  • ファストブレイク
  • 2nd Chance PT
  • ハンドラー自身のショットクリエイト
  • オフボールカッティングでの合わせ
  • ピック&ロールのロールマンのシュート

2PFGのシチュエーションを簡単に挙げましたが、シチュエーションの多さで行くと後半の3つ。ハーフコートディフェンスが重要ということが見えてきます。

また、impactmetrics.jpによると、カギとなるのはウイングの選手のディフェンス。特に比江島選手と高島紳司選手の影響が大きいです。
恐らく、ローテーション的にはこの2選手で出場時間を分散させていると思われますが、比江島選手がコートにいる時といない時のDefensive Ratingの差が、いない時には+5.63。高島選手がいる時には+4.44。つまり、比江島選手がコートにいる時はディフェンスが機能し、高島選手がいるとディフェンスが脆くなりやすいことを示しています。

シーズンがここまできてから急に個人の選手のディフェンス力が上がることはないので、それは仕方ないとして、ビッグマンのカバーリングが勝敗の鍵になってきそうですが、基本、リムプロテクターとなるビッグマンが宇都宮にはいません。ビッグマン個人のそれぞれのDefensive Ratingはいずれの選手もいる時いない時でほとんど差が出ないのも特徴的です。

REB

REBの総数は大きな差はありません。強いて言うなら、敗戦時に僅かに少なくなるという感じです。

チームで最もREBを獲得しているのはグラント・ジェレット選手ですが、チーム2位がニュービル選手の5.6REB。DREBに限れば4.7本で、他のビッグマンの全体の平均REB数に匹敵します。

前の項でビッグマンのディフェンス力に言及しましたが、敗戦時には勝戦時と比べてDREBが約2本少ないです。これは、より相手にFGを決められている証拠にもなります。

相手チームの2nd Chance PTsおいては、そこまで勝敗に差がありませんが、2nd Chance PTs/OREBでは、勝戦時では0.94、敗戦時では1.13と僅かに差が生じます。

STL・BLK

チームの平均STLは6.97本と、CSに出場しているチームとしては三遠に次いで2番目に高い数値ですが、BLKについては2.37本でリーグ14位。CSチームでは3番目に低い数値です。明らかにビッグマンのディフェンスよりもバックコート陣のディフェンス力が高いですね。

平均STL数が1.0を超えている選手が3選手おり、またしても名前が出るのは比江島選手(1.0本)とニュービル選手(1.3本)、エドワーズ選手(1.0本)です。また、ジェレット選手がそれぞれ0.9本記録しているため、平面のディフェンスで頑張るスタイルと言えるでしょう。

誘発したTO数と自チームのSTL数を見比べると、勝戦時では53.6%、敗戦時では57.3%と3.7%の違いがあります。相手の自滅を誘うよりも、自分たちから積極的にSTLを狙いに行っている時にはアグレッシブなディフェンスで勝利を掴み取っていることが分かります。

POTにおいては一目瞭然。勝戦時・敗戦時で4.69失点分違います。敗戦時、被2PFGAが少ないにも関わらず、被2PFG%が高くなっているのはこの背景があると言えるでしょう。宇都宮というチームの勝敗を分ける重要なファクターになりそうです。

アドバンスドスタッツ

最後にアドバンスドスタッツについて見て行きましょう。より、宇都宮というチームの「色」が見えてくると思います。

ポゼッション

グラフのサイズ上、勝敗時に凄く差が生じているように見えますが、数字上はPossessionもPaceも1POSSも差がありません。勝っても負けてもチームのスタイルを維持し続けるベテランチームらしい結果だと思います。

Rating

勝戦時は被FG%が40.9%、特に被2PFG%が47.9%と2Pでの失点期待値が0.96失点に抑えていることがこの結果に示されています。高確率なオフェンスに目が行きがちですが、ディフェンスも優秀と言えます。

逆に敗戦時にはDefensive Rateが114.61とディフェンスが機能していないことが見て取れます。STL・BLKの項で触れた通り、明確にリムプロテクターとなるビッグマンがいないので、バックコートのディフェンスが抜かれたら脆いのでしょうか?

TS%・eFG%

勝戦時のTS%は驚異の60.3%と流石の高効率。シーズン平均においてもTS%(56.3%)・eFG%(58.6%)はいずれの数値もリーグ1位の成績です。

この2つの項目は、指標の性質上、如何に得点期待値の高いシュートを選択しているかが見えてくる指標です。%FGA3Pが高水準とは言え、2PFG%も61.0%とかなり高い水準ですから、実のところ、3Pをメインにしているのではなく、あくまでペイントアタックを容易にするために3Pシュートの手札を持っておく。というチームコンセプトなのかもしれません。

REB%

REBの項では、「敗戦時にはDREBが獲れずにいる傾向にある」と言及しましたが、REB%の指標に置き換えると、反面、敗戦時の時の方がDREB%が1.7%高くなっています。これは、そもそも相手チームのシュート確率が良く、自チームのDREBシチュエーションに至らない(≒母数が少ない)ということが見えてきます。

ただ、全体の傾向としては、試合全体のREBシチュエーションの差は勝敗への影響が少ないと思われます。

AST%

勝戦時、AST%・被AST%がほぼ拮抗しているため、パッシングゲームに強みがあることがわかります。逆に敗戦時のデータを見てみると、AST%が2.7%減、被AST%は4.0%減という結果に。

ここから分かることは、パッシングゲームとは逆のアイソレーションゲームにはやや弱いということでしょうか?強みとしては比江島選手とニュービル選手のペイントアタックを1stオプションに、2ndオプションとして3Pシュートの手札があると表現しました。この2選手の選択肢が多い方が優位に進められるわけですが、3Pの確率が上がらないと、その分、無理にフィニッシュを試みてFG失敗というパターンが分かりやすそうです。

TO%

勝戦時でもTO%は概ねリーグの平均程度の水準。この水準で勝戦時のOffensive Rateが120を超えているのは、それはそれで凄いと思います。

逆に敗戦時にはTO%が15.0%まで跳ね上がります。基本的に流れに関係なくPossession数が変わらないチームなので、TO%が上がれば上がる程、POTによる失点のリスクが多くなります。

ということで、被POTEの差も見てみましょう。グラフ上では大きな差に見えますが、数値上は0.20点の差。寧ろ、勝戦時でも1.00失点以上の期待値を与えていると考えると、この辺はチームとして意識の改善をした方が良いかもしれません。

PPP

勝戦時であってもPPPが1.00を下回った試合が2試合あります(12/18@越谷戦・4/23A東京戦)。シュートが決まらない時でも粘れる強さがありますね。

また、三遠同様、敗戦時でもPPPが1.00を超えているのは流石の一言。ですが、PPPが1.10を超える高効率なバスケを展開していても負けた試合がなんと5試合もあります。

  • 12/21 名古屋DD戦
    • 83-85(PPP:1.12)
  • 1/26@琉球戦
    • 88-97(PPP:1.14)
  • 3/23 三遠戦
    • 89-105(PPP:1.15)
  • 4/16@千葉戦
    • 79-85(PPP:1.11)
  • 4/27 群馬戦
    • 81-84(PPP:1.19)

何度も書くように、シーズン後半戦の千葉・群馬戦は既に地区優勝が確定していたためノーカウントにしてもいいくらいですが、粘り強さがある一方、殴り合いのスコアリングゲームには弱いのかもしれません。

FTR

FTA:1本あたり、何本のFGAが記録されているかのデータで、オフェンス時のアグレッシブさを表す指標と言われています。グラフから見えるように、勝敗に関わらずほぼ同じです。

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